骨挫傷とは,大きな外力によって骨の内部が損傷し,出血して起こります。
骨挫傷は後遺障害に認定されないと思っている方もいるのではないでしょうか。
当コラムでは,骨挫傷の後遺障害についてご説明いたします。
目次
1 骨挫傷の診断方法と治療方法
骨挫傷を発症すれば,症状としては,受傷部位の強い圧痛,受傷部位の軽度の腫脹,可動時の痛み,長引く痛みなどがあります。
レントゲンやCTでは骨の異常を認めることができないので,MRI検査を行って骨の内部に内出血があるかを確認して診断します。
安静にして,痛みの程度によっては鎮痛剤や松葉づえなどを使用します。
1~3カ月程度経過すれば症状が改善することが多いです。
2 骨挫傷は自賠責保険では後遺障害に認定されないという誤解
骨挫傷は完治することが多いですが,骨挫傷発症後,痛みが残ることもあります。
その場合,神経症状の後遺障害等級を獲得できる可能性があります。
等級 | 後遺障害 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 障害の存在が医学的(ないしは他覚的)に証明できるもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 障害の存在が医学的に説明可能なもの |
3 骨挫傷の後遺障害が残ったら,何を請求できる?
交通事故で骨挫傷の後遺障害が残れば,加害者は被害者に対して損害賠償責任を負います。
⑴積極損害
積極損害とは,交通事故被害者が出捐した,あるいは出捐を余儀なくされる金銭を指します。
①治療費
診察料,手術料,投薬料,処置料,入院料などが治療費にあたります。
②付添看護費
12歳以下の子供への近親者の付添いに対する補償や,医師が看護の必要性を認めた場合の看護料などをいいます。
③雑費
入院中に支出した日用品雑貨費などです。
④通院交通費
基本的には,電車やバスなど公共交通機関の交通費が認められます。
⑤装具・器具等購入費
治療に必要な器具,後遺障害が残って身体機能を補うために使用する器具の費用は,必要かつ相当な範囲であれば請求できます。
⑥損害賠償請求関係費用
診断書料や保険金請求手続費用などが,必要かつ相当な範囲で認められます。
⑦弁護士費用
弁護士費用のうち10%を,加害者に請求することができます。
なお,被害者ご自身が加入している保険に弁護士費用特約が付されていれば,弁護士費用の心配をする必要はありません。
⑧遅延損害金
事故当日を起算日として,法定利率年5%で算定します。
⑵消極損害
①休業損害
交通事故での受傷によって休業したことによる収入減です。
現実の収入減がなくても,有給休暇を使用していれば休業損害と認められます。
休業期間中の昇給,昇格(またはその遅延)や休業に伴う賞与の減額や不支給も休業損害として認められます。
②後遺障害逸失利益
将来得られたであろう収入から,後遺障害が原因で得られなくなった収入をいいます。
後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(有職者または就労可能者の場合) |
基礎収入額は,原則として事故前の収入を指します。
もっとも,被害者の属性が以下の場合,それぞれ基礎収入とするものが変わります。
30歳以下の労働者 | 賃金センサス全年齢平均賃金 |
事業所得者 | 申告所得 |
会社役員 | 役員報酬のうち,労務提供の対価部分 |
家事従事者 | 賃金センサス産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均賃金 |
学生・生徒・幼児 | 賃金センサス産業計,企業規模計,学歴計,男女別全年齢平均の賃金額。女子年少者の場合は,全労働者の全年齢平均賃金で算定する |
高齢者 | 就労の蓋然性があれば,賃金センサス産業計,企業規模計,学歴計,男女別,年齢別平均賃金額 |
失業者 | 労働能力・労働意欲・就労の蓋然性があるものは逸失利益が認められる |
労働能力喪失率は,後遺障害等級によって変わります。
労働能力喪失期間は,症状固定日を始期として,67歳を終期とします。
なお,高齢者の逸失利益については当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
⑶慰謝料
①傷害慰謝料
受傷したことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償です。
入通院慰謝料とも呼びます。
入通院慰謝料については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
②後遺障害慰謝料
後遺障害が残ったことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償です。
後遺障害等級が高いほど,後遺障害慰謝料の基準も高くなります。
後遺障害慰謝料の計算方法については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
⑷物損
①修理費
修理費用のうち,修理のために必要かつ相当な部分が修理費として認められます。
②評価損
評価損が損害として認められることは少ないです。
評価損については当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
追突事故での評価損を加害者側に請求、保険会社に拒否された場合の対処法
③代車使用料
被害車両が使用できない間に代車を利用した際の使用料です。
4 骨挫傷の後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益や損害賠償請求の方法と注意点
⑴骨挫傷の後遺障害慰謝料
自賠責基準は,被害者への最低限の補償を目的としているので,金額が低いです。
これに対して,弁護士が示談交渉などで使用することができる弁護士基準では,約3倍金額が高くなります。
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 弁護士基準(裁判所基準) |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 |
⑵骨挫傷の後遺障害逸失利益
骨挫傷の後遺障害が残った場合の労働能力喪失率は,以下のようになっています。
等級 | 後遺障害 | 労働能力喪失率 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 14% |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 5% |
⑶骨挫傷で後遺障害が残ったときの損害賠償請求方法
①症状固定と診断される
症状固定だと診断されると,後遺障害等級を獲得できる可能性があります。
②後遺障害申請する
事前認定(加害者請求)または被害者請求いずれかで,後遺障害申請をします。
その結果,後遺障害等級を獲得できれば,後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益など後遺障害を原因とする損害についても請求することができます。
③示談交渉する
症状固定と診断され,後遺障害等級を獲得すれば,示談交渉を開始しましょう。
弁護士基準での後遺障害慰謝料や,後遺障害逸失利益も含めた示談金を主張しましょう。
⑷骨挫傷で後遺障害が残って損害賠償請求するときの注意点
①症状固定と診断されるまで治療を受けておく
症状固定だと診断されるまでは,後遺障害が残るかどうか分かりませんし,治療費も確定しません。
少なくとも症状固定と診断されるまで,示談交渉を開始してはいけません。
②被害者申請を利用する
被害者の納得いく書類を提出できること,示談成立前でも示談金の一部を受け取ることができることから,被害者申請を利用しましょう。
③示談書の内容を精査する
示談成立後,示談をやり直すことはできないので,安易に示談を成立させてはいけません。
5 骨挫傷の後遺障害で弁護士に依頼するべきなのか?
弁護士に依頼するメリットとして,以下のものがあげられます。
⑴ストレスを軽くできる
自分で処理するのであれば,保険会社とやり取りしなければいけません。
相手が使用している専門用語が分からない,やり取りが何往復も続くなどが相まって,被害者本人には大きなストレスがかかります。
弁護士に依頼すれば,保険会社とのやり取りも行ってもらえるので,被害者の負担は軽くなります。
⑵難しい後遺障害申請が上手くいく可能性が上がる
骨挫傷の後遺障害等級を獲得するには,他の後遺障害よりもコツが要ります。
後遺障害申請に慣れている弁護士に任せた方が,後遺障害等級を獲得できる可能性が高まります。
⑶示談金増額の可能性がある
弁護士が示談交渉を行うのであれば,弁護士基準を使用できるうえに,日常的に交渉を行っている弁護士は交渉上手なので,示談金を大幅に増額できる可能性があります。
⑷早期解決の可能性がある
弁護士は,治療から示談成立までの流れを熟知しているので,示談交渉に至るまでスムーズに進みます。
また,弁護士は法的根拠に基づいて示談交渉を行うので説得力があり,保険会社に意見を聞いてもらいやすくなります。
これらのメリットがあるので,特に,骨挫傷の後遺障害では弁護士に依頼することをお勧めします。
6 まとめ
骨挫傷の後遺障害等級を獲得するには,他の後遺障害と異なる苦労があります。
そのため,他の後遺障害以上に,弁護士に依頼するメリットが大きいです。骨挫傷の後遺障害で悩まれている方は,交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。