2024.02.09 2024年5月8日

英文契約でタイム・イズ・オブ・エッセンス条項(Time is of Essence)を規定する場面とは?

英文契約でタイム・イズ・オブ・エッセンス条項(Time is of Essence)を規定する場面とは?

1 英文契約書におけるタイム・イズ・オブ・エッセンス条項(Time is of Essence)とは?

タイム・イズ・オブ・エッセンス条項(Time is of Essence)とは,時間や期日といった契約の履行期に重要な意味を与えるための条項です。

略してTOE条項と呼ぶことがあるため,以下ではTOE条項といいます。

2 英文契約書においてタイム・イズ・オブ・エッセンス条項を規定する場面

履行期が重要となる契約を締結する場面で,TOE条項が規定されます。

特定の契約では,履行期の定めが非常に重要な要素となっており,その履行期が過ぎた場合には,納品自体が意味をなさない場合があります。

例えば,納品日を12月24日として注文したクリスマスケーキが,年を越してから納品されても意味がないでしょう。

そこで,TOE条項を設けて履行期に重要な意味を持たせ,かつ,履行期に遅れることは直ちに重大な契約違反となることを明確にするのです。

TOE条項のねらいは,履行期を守らなかった場合に損害賠償や解除ができるようにすることで,相手方に履行期を遵守させようとすることです。

相手方に履行期を遵守してもらうことが重要となる契約では,できるだけ入れておきたい条項と言えます。

3 英文契約書におけるタイム・イズ・オブ・エッセンス条項の効果

TOE条項は,その契約において履行期を守ることが重要だということを示すものであり、履行期を守れなかった場合に,「重大な契約違反」(“material breach”)にあたることを契約書に規定することがあります。

相手方が履行期を守らないことは契約違反にあたるため,そのことで損害を負った場合には,損害賠償が認められる可能性があります。

しかし,相手方が履行期を守らなければ契約の解除までも認められるかというと,

適用される法にもよりますが,重大な契約違反がなければ,契約の解除が認められない場合があります。

そのような場合には,TOE条項が非常に重要となってきます。

TOE条項がなくとも,契約の内容や当事者の意思から,履行期が重要であると判断されることもあります。

しかし, TOE条項を設けることにより、履行期が契約の重要な要素であると認められやすくなるでしょう。契約書にはTOE条項とともに、履行期を遵守しない場合の効果(損害賠償や契約解除等)についても明確に規定する方がよいでしょう。

自社にとって履行期の遵守が重要な意味を持ち,そのことを契約の要素としたい場合には,TOE条項を置くようにしましょう。

4 英文契約書におけるタイム・イズ・オブ・エッセンス条項の例文

ここでは,TOE条項の例を挙げて解説します。

(1)すべての履行について定めている

例)
Time is of the essence in the performance of this Agreement.

参考訳:
本契約の履行において,期限は重要な要素である。

上記例は,一般的なTOE条項です。

商品の引渡しと代金の支払いなど,契約当事者が互いに履行すべき義務を負う場合,双方ともに履行期の遵守が徹底されなければなりません。

いずれの契約当事者も,履行期を守れなかった場合には,重大な契約違反に対する責任とリスクが生じることになります。

(2)特定の履行についてのみ定めている

例)
The time of delivery in the delivery of products by ABC to XYZ under this Agreement is of the essence.

参考訳:
本契約に基づきABCがXYZに製品を納入するに際しての期限は、重要な要素である。

上記例では,ABCのXYZに対する債務のうち,製品の納入についての履行期を重要な要素としています。

TOE条項から生じる効果は,ABC側にとっての納品期日のみが重要な要素となることです。

そのため,XYZが負うと考えられる代金の支払義務については,実際の履行が多少遅れても,重大な契約違反とならない可能性があります。

5 英文契約書におけるタイム・イズ・オブ・エッセンス条項の注意点

実際に,契約書でTOE条項を定める場合には,以下の点に注意しましょう。

(1)義務の内容を不明確にしない

どのような義務の履行期日が重要な要素となるのか,義務の内容を明確に定めましょう。

義務の内容が不明確であると,「この義務の履行期日については重要な要素ではない」などと,特定の義務の履行遅滞について,重大な契約違反であることを否定されかねません。

義務については,根拠となる適用法の条文などを引用しておくと,より一層明確になります。

(2)不必要に規定しない

納期をどうしても守ってもらいたいという意図から,TOE条項を定めようと考えてらっしゃる方もいるかと思います。

しかし,契約書における規定の仕方によっては、自社が相手方に対して負う債務についても、多少履行期が遅れただけで重大な契約違反として相手方から損害賠償請求を受けたり契約を解除されるリスクを負う可能性があります。

6 まとめ

今回は,タイム・イズ・オブ・エッセンス条項(Time is of Essence)について解説しました。

タイム・イズ・オブ・エッセンス条項とは,時間や期日といった契約の履行期に重要な意味を与えるための条項です。

略してTOE条項と呼ばれることもあります。

履行期が重要となる契約を締結する場面で規定され,履行期を守れなかった場合に,「重大な契約違反」(“material breach”)にあたることや、その効果として、損害賠償や契約の解除を規定することがあります。

TOE条項を規定するにあたっては,重要な要素とする義務の内容が不明確とならないよう注意してください。

また,TOE条項が必要なのかどうかにも注意しましょう。もし,英文契約書についてご不明な点がございましたら,当事務所までお気軽にお問い合わせください。

このコラムの監修者

弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録

国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。

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