2024.02.09 2024年5月8日

リスク回避!英文契約書における契約譲渡条項(Assignment)の必要性

リスク回避!英文契約書における契約譲渡条項(Assignment)の必要性

1 英文契約書の契約譲渡制限条項(Assignment)とは?

契約譲渡制限条項(Assignment)とは,契約、及び、それに基づく権利義務の譲渡その他の処分を制限,あるいは禁止するための条項です。

具体的には,それらの譲渡等を認めるのか,どのような場合に,どのような手続きによって認めるのかといった条件などについて定めます。

日本の民法では、契約上の地位の移転は,契約から生じる一切の権利や義務を第三者に移転させることあり,すでに生じている債権・債務のみならず,契約から将来生じる債権・債務の全部が含まれます(民法539条の2)。

例えば,自社が売買契約の買主である場合,商品の受取りや代金の支払いをしない間に,自社の地位を他社に譲渡すると,商品を受け取る権利や代金を支払う義務など,一切の債権債務が移転します。

さらに,取消権や解除権など,法律上行使できる権利や契約条項に記載された権利もすべて移転されます。

第五百三十九条の二契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。

引用:民法|e-Gov 法令検索

2 英文契約書における契約譲渡制限条項の必要性

(1)予期せぬリスクを回避するため

契約譲渡制限条項は,知らない間に契約の相手方が変わってしまうという,予期せぬリスクの発生を回避するために必要となります。

前述の通り,日本の民法では,契約上の地位の移転についての定めがあり、相手方がその譲渡を承諾しない限り勝手に契約上の地位を第三者に移転できませんが,適用される法によっては,そうではない場合もあります。

信用が重要となる契約において,契約の相手方が変わることは,契約当事者にとって重大な影響を与えかねません。自社の知らない間に,相手方が変わってしまうと,譲渡人が引き続き譲受人とともに責任を負うものと認められない限り,信用がない相手方の契約違反や破産のリスクを負担することになってしまいます。

また、契約相手方は変更ないとしても、自社の知らない間に契約に基づく権利義務が第三者に譲渡されてしまうと、様々な不都合が生じることが考えられます。そのようなリスクを回避するために,契約、及び、それに基づく権利義務の譲渡その他の処分を制限,あるいは禁止する契約譲渡制限条項を規定するのです。

(2)一定の条件下で譲渡を認めるため

一切の譲渡を認めないとすると,契約当事者にとって不都合となる場合があります。

例えば,事業譲渡契約の譲渡人となる場合や,自社が賃借しているテナント上の賃借人としての地位を,株式の100%を保有する子会社に譲渡したい場合などです。

そこで,上述の予期せぬリスクを負わないよう,一定の条件の下で,契約等の譲渡を認めることが多いといえます。

3 英文契約書における契約譲渡制限条項の作成上のポイント

契約の譲渡は,一定の条件の下で認められると定めることが一般的です。

そのため,契約譲渡制限条項を作成するにあたっては,どのような場合に,どのような手続きの下で契約の譲渡を認めるのかという条件が重要なポイントとなります。

慎重に検討した上で,契約書のドラフティングやレビューを行うようにしましょう。

以下では,例文をあげ,作成上のポイントについて具体的に解説します。

(1)条件を明確にする

例)
This Agreement may not be assigned or transferred, in whole or in part, to a third party without the prior written consent of the other party. Any assignment made without such consent shall be null and void. 

参考訳:
本契約の全部または一部については,相手方の書面による事前の同意がなければ,第三者に譲渡できないものとする。かかる同意なしになされた譲渡は無効とする。

上記例は,契約譲渡制限条項の一般的な規定です。

契約譲渡の条件として,相手方の書面による事前の同意を定めています。

相手方は事前に譲渡先を調べ,譲渡を許すかどうか決定することが可能となります。

譲渡を認める場合には,書面によって同意を与えなければならず,この書面が同意の証拠となって,後日の紛争を回避することが可能となります。

(2)制限を受ける側を明確にする

例)
ABC shall not assign this Agreement, in whole or in part, to any third party without the prior written consent of XYZ.
However, ABC may assign this Agreement to an Affiliate of ABC without XYZ’s consent. 

参考訳:
ABC社は,本契約の全部または一部をについて,XYZ社の書面による事前の同意がなければ第三者に譲渡できないものとする。
ただし,ABC社の関連会社に対しては,XYZ社の同意なしに本契約を譲渡することができる。

立場関係や交渉力などの違いから,契約の一方当事者のみが譲渡制限を負う場合もあります。

そのような場合には,契約書で制限を受ける側を明確にしましょう。

上記例では,ABC社の関連会社に対しては,XYZ社の同意を必要としない旨を定めています。

「関連会社」とは,どのような会社をいうのか,「関連会社」という用語の定義付けが非常に重要となってきます。

関連記事:【基本】英文契約の定義条項(Definitions)はなぜ重要なのか?その意味と注意点を解説

(3)譲渡後の権利義務を明確にする

例)
Neither party shall assign this Agreement, in whole or in part, without the prior written consent of the other party.
In the event of such assignment upon consent, the assigning party will remain liable to the other party and will not be relieved of its obligations under this Agreement. 

参考訳:
いずれの当事者も,相手方の書面による事前の同意がない限り,本契約の全部または一部を譲渡できないものとする。同意に基づいて譲渡がなされる場合,譲渡した当事者は,相手方に対して引き続き責任を負い,本契約上の義務からは解放されないものとする。

契約内容によっては,譲渡を認める場合もあるでしょう。

しかし,譲渡を認めるにしても,元の契約相手方が権利義務関係から抜けるのであれば,当該相手方の責任を問うことができなくなります。そこで,譲渡したとしても,元の契約相手方の義務は残存することを規定することがあります。

4 まとめ

今回は,英文契約書の契約譲渡制限条項(Assignment)について解説しました。

契約譲渡制限条項(Assignment)とは,契約等譲渡その他の処分を制限,あるいは禁止する条項です。

具体的には,それらの譲渡等を認めるのか,どのような場合に,どのような手続きによって認めるのかといった条件などについて定めます。

信用が重要となる契約において,契約の相手方が変わることや契約に基づく権利義務の譲渡は,契約当事者に重大な影響を与えかねません。

契約譲渡制限条項は,そのようなリスクを回避するために設けられます。契約書を作成するにあたっては,条件や譲渡後の権利義務関係などを具体的に明記するよう心掛けましょう。

もし,英文契約書でご不明な点がございましたら,お気軽に当事務所までお問い合わせください。

このコラムの監修者

弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録

国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。

カテゴリ一覧

アクセスランキング

新着記事

CONTACTお問い合わせ



ご相談など、お気軽に
お問い合わせください。

電話アイコンお電話でのお問い合わせ

06-4394-7790受付時間:8:30~19:00(土日祝日も営業)

メールアイコンwebフォームよりお問い合わせ