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損害賠償の制限条項(Limitation on Liability,LOL )とは,契約の一方当事者に契約違反があった場合に,その一方当事者が負う損害賠償責任の「範囲」や「額」について,一定の制限を定めたものです。
例えば,契約違反から生じる特別,派生的または間接的損害について責任を負わないものとするといった条項や,責任を負う額については一定額を超えないといった条項です。
上記例は,損害賠償責任を負う「範囲」を制限した規定です。
契約が適切に履行されていれば得られたであろう利益を指す「逸失利益」の損害については,間接損害(indirect damages)や特別損害(special damages),派生的(結果的)損害(consequential damages),逸失利益(loss of profit)など様々な表現があります。
準拠法によって,それぞれの表現に何らかの意味の違いがある可能性も否定できないことから,念のため網羅的に列挙しておくことが望ましいでしょう。
上記例は,損害賠償責任を負う「額」を制限した規定です。
上限額については,特にいくらにしなければならないといった決まりはなく,当事者が内容を理解した上で合意にいたっていれば問題ありません。
もっとも,一定の場合には損害賠償の制限条項が認められない場合もあります。この点については,後述する「3 損害賠償の制限条項が無効となる場合もある」にて詳述します。
一方当事者が負う莫大な損害賠償責任を負うリスクを回避し,契約締結に至るためです。
契約違反があった場合,その契約違反によって生じた損害を回復するため,相手方に損害賠償を請求します。
一般的には,契約違反によって被った損害額の賠償を求めることができますが,契約内容によっては莫大な損害額となることもあります。
例えば,ソフトウェア販売契約によって販売したソフトウェアの誤作動により,会社の取引がストップしてしまうといった事態が生じた場合,その損害額は莫大なものとなるケースがあります。
また,米国各州においては,懲罰的損害賠償制度が採用されており,実際に被った損害よりはるかに大きな金額の賠償額を負わされることもあります。
このように莫大な損害賠償責任を負ってしまう可能性があると,契約締結をためらってしまうことになりかえないため,このような事態を回避すべく損害賠償の制限条項が設けられます。
制限条項を定めたとしても,責任免除や合意した賠償額が認められない場合もあります。
損害賠償の制限条項は,条項自体が無効となったり,仮に有効であったとしても裁判でその適用範囲が制限されてしまう場合もあるため注意が必要です。
例えば,一般的に認められる損害賠償責任の額が100億円であるにもかかわらず,賠償額の責任を100万円とする場合です。
このような極端な制限については,常識的に考えて不公平であるとの判断のもと,無効とされる場合があります。
もっとも,交渉経過や契約内容,他の条項とのバランスといった事情から,不公平ではないと判断されることもあります。
契約相手が一般消費者である場合には,消費者契約法が適用されます。
日本の消費者契約法8条では,損害賠償責任の全部を免除する条項や故意・重過失がある場合にも責任を一部免除する条項は無効となることを定めています。
参照:消費者契約法|e-Gov 法令検索
適用法によっては,損害賠償の制限条項の効力が認められない場合もあります。
外国企業と契約締結に際して英文契約書を作成する場合には,準拠法や相手方の国,州,地域の法令に気を付けなければなりません。
英米法には,‘parol evidence rule’と呼ばれるルールがあり,その内容を踏まえて「口頭証拠排除の原則」と訳されます。
口頭証拠排除の原則とは,書面重視,口頭証拠軽視・排除を表現したルールであり,当事者の契約内容について,合意内容が最終的な完全なものとして契約書が作成されます。
契約書に書かれていることが全てであるという考えのもと,具体的かつ詳細に条件が定められ,あらゆる不測の事態を想定して契約書が作成されます。
英文契約書に,“Entire Agreement”(最終性条項)が規定されるのは,このような英米法のルールが念頭にあるためです。
そのため,自社にとって不利な損害賠償の制限条項が定められていて納得できない場合には,後で話し合えば何とかなるという考えは捨て,必ず交渉し,削除あるいは修正を求めるようにしましょう。
契約締結段階で契約書のレビューを行い,修正を重ねることは,英文契約書を作成するうえで基本となりますので,英文契約を専門とする弁護士や法務担当に任せることをお勧めします。
今回は,英文契約における損害賠償の制限条項について解説しました。
損害賠償の制限条項とは,契約の一方当事者に契約違反があった場合に,その一方当事者が負う損害賠償責任の「範囲」や「額」について,一定の制限を定めたものです。
このような損害賠償の制限条項は,莫大な損害を被るリスクを回避し,円滑に契約締結を図るという点において合理性があります。
しかし,どのような内容であっても認められるのかというと,そうではない場合もある点に注意が必要です。
自社に不利な内容となっており,そのような取り決めに納得がいかない場合には,必ず交渉を行い契約書の修正を求めましょう。もし,契約書のレビューに不安な点がある場合には,契約書にサインする前に,一度弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
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