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仲裁合意(仲裁契約)とは,当事者が,一定の紛争を解決する権限を第三者に委ね,その判断に従うことを約することをいいます。
当事者の合意に基づくものですので,原則として,誰を仲裁人とするのか,手続言語はどうするのかといった条件の詳細を当事者で決めることができます。
また,仲裁機関(Arbitration Institutions)ごとに仲裁規則(Arbitration Rules)を定めており,仲裁手続を利用する当事者は,どの仲裁規則に従って仲裁手続を行うかを選択することもできます。
例えば,日本商事仲裁協会(JCAA)を仲裁機関とする場合には,商事仲裁規則(2021)やインタラクティヴ仲裁規則(2021)など,3つの仲裁規則の中から当事者が選択することが可能です。
世界的には,パリのICC(International Chamber of Commerce,国際商業会議所)やアメリカのAAA(American Arbitration Association,アメリカ仲裁協会)などが,主な仲裁規則として挙げられます。
仲裁は,国際取引におけるスタンダードな紛争解決方法である考えられています。
そのため,英文契約では,紛争解決条項(Settlement of Dispute)の1つとして仲裁条項(Arbitration)が定められることが多いです。
参考:仲裁規則|JCAA(日本商事仲裁協会)
仲裁判断(Arbitral Award)は,仲裁手続の当事者の権利義務関係について,仲裁廷(Arbitral Tribunal)が下した決定であり,特定の国の裁判における確定判決と同じ効力があります。
国際連合国際商取引委員会の「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Award, 通称:ニューヨーク条約)の締約国では,仲裁判断の承認・執行が可能です。
ニューヨーク条約の締約国は,2023年12月の時点において,世界170か国を超えているため,外国においても仲裁判断が承認・執行できる可能性が高いです。
特定の国における裁判の判決が外国で承認・執行できない場合が多いことを考えると,仲裁判断が国を超えた効力をもつことは,仲裁合意の最大のメリットといえるでしょう。
参考:Contracting States(締約国)|NEW YORK ARBITRATION CONVENTION
仲裁合意は当事者の自由な合意に基づくものですので,当事者で詳細な条件を定めることが可能です。
仮に紛争となった場合,裁判と比べて納得のいく解決を図れる可能性が高いです。
仲裁は裁判と異なり,基本的に上訴がないため,1回の仲裁判断で解決を図ることが可能です。
また,仲裁機関や採用する仲裁規則によっては,迅速仲裁手続を利用することが可能です。
例えば,日本商事仲裁協会(JCAA)で商事仲裁規則(2021)を選択して仲裁手続を行う場合,紛争金額が3億円未満の場合に迅速仲裁手続が採られ,仲裁判断の期限が設けられています。
迅速に解決することができれば,紛争解決コストも少なくて済む可能性が高いため,大きなメリットといえるでしょう。
参考:商事仲裁規則(2021)|JCAA(日本商事仲裁協会)
裁判では,対審および判決の言渡しは公開の法廷で行われます。
ところが,仲裁は裁判とは異なり,公開の法廷で行われるものではありません。
非公開であるため,企業の秘密情報が漏えいすることはなく,予期せぬ不利益が生じる心配はありません。
仲裁人は,裁判でいう裁判官にあたります。
裁判の場合,当事者は,裁判官を選ぶことはできません。
他方で,仲裁は,専門性や中立性を有した仲裁人を当事者が合意で選定することができます。
いざとなった場合,非常に重要な存在となりますので,仲裁人の選定は慎重に行いましょう。
仲裁合意を締結するタイミングは,大きく分けて,「紛争が発生する前」と「紛争が発生した後」の2つがありますが,紛争が生じてから合意にいたることは滅多にありません。
そのため,仲裁合意を締結する場合は,英文契約書にあらかじめ仲裁条項を記載することをお勧めします。
仲裁条項の内容が不明確であると,契約違反といった特定の紛争が起こった場合に,仲裁条項の不備という更なる紛争の原因が増えてしまいます。
また,内容が不明確であるために仲裁条項が無効と判断される場合,そもそも仲裁機関が仲裁申立てを受理してくれない可能性もあります。
必ず仲裁条項の内容は,明確に定めましょう。
仲裁は,通常の訴訟(裁判)とは異なります。
例えば,アメリカの訴訟では,陪審員による事実認定や懲罰的損害賠償による想定外の賠償額請求が認められてしまう可能性があります。
ところが,仲裁においては,陪審制は採用されておらず,仲裁人には懲罰的損害賠償を裁定で言い渡す権限はないとされています。
このような通常の訴訟との違いを意識して,仲裁地や仲裁機関を定める必要があります。
裁判は,裁判官の報酬などを含め,公費によって運用されます。
他方で,仲裁は,当事者が仲裁人名簿の中から希望する仲裁人を選んで,自分たちのために仲裁というサービスの提供を受けるため,仲裁人の報酬など,仲裁手続にかかる費用は両当事者が負担します。
公費で運用される裁判手続と比べて費用が高くなるため,費用の負担について定めておかなければ紛争となる可能性があります。
今回は,英文契約での仲裁合意について解説しました。
仲裁合意(仲裁契約)とは,当事者が,一定の紛争を解決する権限を第三者に委ね,その判断に従うことを約することです。
当事者の合意に基づくものですので,どのような条件のもとで紛争を解決するかは,当事者で詳細に定めることができます。
仲裁手続は,裁判外紛争解決手続として柔軟な解決を図ることができるため,国際取引におけるスタンダードな紛争解決方法と考えられています。
最大のメリットは,仲裁判断が外国においても承認・執行できる可能性が高い点でしょう。
もっとも,内容が不明確であると紛争の原因になってしまうこともあるため,契約書の作成には十分注意してください。
一度契約を締結すると,契約内容の変更が難しくなる場合が多いです。
契約書のレビューやドラフティング(草案作成)は,英文契約専門の法務担当や専門家に任せるなどして,慎重に行うことをお勧めします。もし,英文契約書についてご不明な点があれば,当事務所までお気軽にお問合せください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
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