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取引の相手方が国内企業であっても海外企業であっても、どのような物品を、どのような条件で売買するのかを、明確に規定する必要があるのは同じです。 国際契約であることから、特に問題となったり重要となる事項として、まず、貿易条件と準拠法(特にウィーン売買条約について)の規定について記載します。
外国に所在する会社に対して物品を販売する場合には、国内販売に比べて、輸送費や保険費用が多くかかるでしょう。また、関税等の国内取引では発生しない税金が発生することもあります。 売主、買主ともに、価格決定をする前に、どこの地点までの輸送費を売主が負担し、どの地点から買主が負担するのか、保険費用はどこまで売主が負担しどこから買主が負担するのか、税金が発生する場合はどの税金を売主の買主のどちらが負担するのか、等を明確に決める必要があります。 詳しくは、インコタームズに関する別記事をご覧ください。
契約の法的解釈をする場合に、どの国の法律を基準とするかについて定める条項が、準拠法の規定です。 売主・買主どちらの立場においても、契約に関する紛争が生じた場合に、どの国の法律が適用されるのかによって結果が異なりうることから、準拠法規定がなければ結果の予測が立ちにくく、不安定な立場に立たされることになります。実際に紛争が生じた場合には、どの法律を適用するかについてまず争うことになりかねず、余計な費用と時間が費やされる危険があります。相手方が異なる国に属する場合には、準拠法規定を置いたほうがよいことになります。 一般的には、契約交渉時の力関係等を反映して、契約当事者のどちらか一方が属する国の法律を準拠法とすることが多いでしょう。
ウィーン売買条約とは、「国際物品売買契約に関する国連条約」(英語では「United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods」)のことです。CISGと略されることもあります。 この条約は、異なる国の間で、物品売買(注)に適用される条約のことで、日本は、この条約の加盟国です。 本記事の執筆時点において、加盟国は、次のURLで確認することができます。
あなたの会社が、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、オーストラリア、ニュージーランド、ベトナム、中国、韓国といった、条約に加盟している90を超える国の企業と物品売買の取引をしている場合、契約において条約の適用を排除することを明らかにしない限り、条約は当然に適用されることになります。 イギリス、アイルランド、南アフリカ等の、加盟国ではない国に所在する企業との間で、物品売買の取引をする場合であっても、加盟国である日本の法が準拠法となるときは、ウィーン売買条約が適用されることになります。 ウィーン売買条約が規律する事項(売買契約の成立、及び、売買契約から生じる売主と買主の権利義務(第4条)については、 ①当事者の合意 ②ウィーン売買条約 ③国内法 という順番で解釈されるものと考えられます(4条、6条及び第7条第2項)。そうすると、せっかく契約当事者間で準拠法を定めたとしても、 ウィーン売買条約が規律する事項については、その準拠法よりも優先してウィーン売買条約が適用されることになります。 実務においては、ウィーン売買条約の適用を全面的に排除することを、準拠法規定に明記することが多いと考えます。
This Agreement and any disputes arising out of, or relating to, this Agreement shall be governed by the laws of Japan without regard to the conflict of law rules thereof. This Agreement excludes the application of the United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods.
本契約並びに本契約に起因又は関連する一切の紛争は、その抵触法の規定に関わりなく日本法に従うものする。本契約は、ウィーン売買条約の適用を排除するものとする。
次に、国内契約においても国際契約においても、最も重要な規定の一つである、損害賠償(額の制限)に関する規定について記載します。
売買契約の対象となった物品に何らかの不具合があった場合や、納期が遅れた場合はどうなるのでしょうか。契約書において、製品保証や納期遅延等の規定において、それらの場合でも売主は何ら責任を負わない旨が明記されていなければ、通常、売主は買主に対して、損害賠償責任を含む責任を負うことになると考えられます。
契約書に損害賠償に関する規定がなければ、その取引に適用される法に基づき損害賠償の範囲を検討することになるものの、実際にトラブルが生じた場合、法律の規定だけでは判断が難しいことが多く、トラブルの解決には費用も時間もかかることがあります。そこで、予測可能性を設けるためにも、契約書に、損害賠償に関する規定を設けることが考えられます。あなたが売主の立場であれば、売主が何らかの形で売買契約に違反した場合でも、制限なく全ての損害について責任を負うことは避けるために、できるだけ責任を制限したいと考えるでしょう。一方、買主の立場であれば、売主が制限なく責任を負うべきだと考えるでしょう。あなたが売主の立場であれば、次のように、損害賠償額について制限を設ける規定は、望ましい規定の一例であることになるかもしれません。
Seller’s maximum liability to Buyer hereunder shall be the amount of money Buyer paid to Seller for the Products.
本契約における売主の買主に対する責任は、買主が本製品のために売主に支払った金額を限度とする。
あなたが売主の場合で、額の制限を設けることは難しいときは、少なくとも間接損害等の責任は負わずに済むような規定を設けることが考えられます。
Neither Party shall be liable to the other Party for any indirect, special, punitive, incidental or consequential damages, or any damages for lost profits, business interruption, loss of goodwill or business reputation, even if the liable Party was advised of the possibility of these damages, or these damages were reasonably foreseeable at the time this Agreement took effect.
いずれの当事者も、間接損害、特別損害、懲罰的損害、付随的損害若しくは結果的損害、又は、逸失利益、事業の中断、グッドウィル若しくは事業上の信用の喪失に関する損害について、たとえ責任を負う当事者がこれらの損害の可能性について知らされていたとしても、又はこれらの損害が本契約発効時に合理的に予見できたとしても、相手方当事者に対して責任を負わないものとする。
あなたの会社が買主の場合、上記のような、売主が間接損害等の責任は負わずに済むような規定を設けることに合意する場合であっても、 ①重過失や故意による場合(gloss negligence and willful misconduct)、 ②第三者知的財産権の侵害、 ③製造物責任、 ④秘密保持義務の違反などは例外とするように相手方に対して要求することが考えられます。 それは、①は、売主として当然責任を負うべきともいえますし、②③④などについては、直接損害について売主に責任を負ってもらうだけでは買主としては足りない事態が生じる可能性が高くなるためです。 国内契約であっても、国際契約であっても、損害賠償の制限に関する規定には様々なバリエーションが考えられます。製品の内容や予想取引量、保証内容、保険付保の状況などから考えて、価格交渉と併せて、自社にとって合理的な内容の規定を設けることができるように交渉しましょう。 一口で売買契約といっても、製品・商品の内容によって重要となる規定は異なりますし、ここでは記載していないものの、製品保証(Warranty)等の規定は特に慎重な取決めが必要になります。 国内契約・国際契約問わず、売買契約についてご不明な点等ございましたら、お気軽に当事務所までお問合せください。
ウィーン売買条約第3条には、一般的に製造委託と呼ばれる契約についても、本条約の適用があるsalesに該当する場合があることが規定されていますので注意が必要です。
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