債権回収

債権が発生する場面

・物を売って先に納品したが、売買代金を払ってもらえない
・お金を貸したが、返済日がきても返してもらえない
・物を修理したが、修理代を払ってもらえない
・給料日に給料を払ってくれない
・家賃を払ってくれない
・調査を依頼する際に先に料金を払ったが調査をしてもらえない
・物を壊されたにもかかわらず、修理代を払ってもらえない
・ケガを負わされたのに、治療費を払ってもらえない
・離婚の際に、養育費を決めたにもかかわらず払ってもらえない

以上のように、取引上、又は、取引外において、相手が約束を破って、金銭を払ってもらいないことがよくあります。今回は弁護士を利用した債権回収について説明します。

【債権回収の方法】

債権者としては、まず、相手方に対し、支払の督促を、口頭で、あるいは書面でします。
しかし、相手方が任意に支払ってくれればいいのですが、なかなかそうはいきません。
このような支払不能の事態に備えて、通常は、保証人という人的担保、抵当権、質権などの物的担保を事前にとって、そこから優先的に再建回収を図ったりしますが、それでも、回収できないことがあります。
そこで、債権回収の専門家である弁護士に依頼することになります。
弁護士は、まず、債務者に対し、内容証明郵便を送って、さらには支払督促をします。

弁護士名で内容証明を送付することで債務者に強いプレッシャーを与えます。
また、支払督促を受け取ってから債務者が2週間以内に異議申立をしなければ仮執行宣言付支払督促が付され、債権者はこれに基づき強制執行の申立てをすることができます。

ただ、これらの場合でも、契約時に本人確認がされておらず、債務者の氏名、住所が不明の場合は、どうすることもできません。
また、弁護士は、相談段階で、債務者に債権額に見合った財産、例えば高価品、預貯金、車両、不動産を所有しているか、勤務先はどこか等を確認、場合によっては調査します。
万が一、調査によってもこれらが確認できない場合は、この段階で断念することが多くあります。
なぜなら、たとえ裁判で勝訴判決を得て強制執行手続をとっても債務者に財産がない場合には、回収は不可能であり、費用と時間が無駄になるからです。

 口頭や書面による請求内容証明の送付支払督促訴訟
方法・手続の主体債権者自身通常は、債権者の依頼により弁護士が行う債権者の申立により裁判所が行う裁判所
対象となる債権制限なし制限なし金銭債権に限る制限なし(少額訴訟は金銭債権のみ)
債権の消滅時効中断しない中断する中断する中断する
費用通話代程度1通あたり1300円訴訟費用のおよそ半分少額訴訟(訴額が60万円以下)最大6000円それ以外:訴額による

いずれの方法をとるかは、債権の状態(直ち消滅時効を中断すべきか)、債権額や債務者の財産状況(費用等を差し引いても余剰があるか)、債務者の態度(不誠実・好戦的あるいは弁護士がすでに就いている)、さらには、その後の裁判所を用いた強制的な回収手段も視野に入れているのか等、総合的に判断する必要があります。

【各種強制執行】

では、債務者の氏名、住所が判明しており、財産の存在も確認できる場合は、どのような手続をしていくのでしょうか?
まず、裁判所へ訴訟提起して、数回の裁判所での手続の中で立証しながら、最終的には、判決を得ます。
そして、勝訴判決を得ても、債務者が任意に支払わないときは、次の段階、強制執行手続をとらなければなりません。
強制執行手続は、以下のように債務者の財産の種類によって、手続が異なります。

ITビジネスを進めていく上で、以下に挙げるような、従来にはなかった契約が出てきました。各契約書を作成する上で、とくに重要な項目を指摘します。

①債権執行

(流れ)
債権差押命令申立→債務者へ債権差押命令→取立て

(対象)
主に銀行預金債権、給料債権が対象となります。

(特徴) 実務上、現在、最も回収率が高く、費用が少なくてできる手続です。
従来、銀行預金債権は、債務者の支店がわからないと差押えできませんでしたが、最近は、弁護士会照会を通じて、一部の大手銀行については、債務者の支店を確認することができるようになりました。
また、給料債権については、勤務先がわかれば、原則、給料債権の4分の1を差押えて回収することできます。 さらに、養育費については、給料債権の2分の1を差押えることができます。

②動産執行

(流れ)
執行官への申立て→執行日時の決定→執行官とともに差押現場に行く→差押→競売→配当

(対象)
動産、そして現金も対象となります。但し、債務者の最低限の生活を守るため、生活に欠くことのできない衣服や家具等、仕事に必要な器具や備品等、66万円以下の現金は差し押さえることはできません。
なお、自動車は動産執行ではなく、自動車執行の対象となります。

(特徴) 債務者が個人であれば債務者の自宅へ、債務者が会社であれば債務者の事務所へ執行官が立ち入って執行します。
債務者の自宅への執行については、債務者の生活必需品については、差押ができず、あまり実効性はありません。
他方、債務者の会社事務所への執行については、個人の場合のような差押対象物に制限はなく、事務所内の現金や事務用品にいたるまで差押えることができ、さらには金庫の開錠もでき、実効力があります。

③不動産執行

(流れ)
不動産強制競売申立→強制競売の開始決定・差押→不動産の調査→最低売却価格及び売却期日の決定→不動産の売却→不動産の引渡→配当

(対象) 登記することのできる不動産のみならず、不動産の共有持分や登記された地上権等も対象となります。

(特徴) 不動産については、抵当権などの担保権、税金滞納の差押がされている場合には、これらに劣後するため、これらを除いて余剰があれば、確実に回収できることになります。 ただし、債権執行、動産執行の費用が数万円ですむのに対して、これについては、まず、申立時に100万円ほどの予納金を収めなくてはならず、時間も半年以上かかる店がデメリットとなります。

【強制執行以外の方法】

以上のような強制執行によって債権を回収できる方法がありますが、任意の支払いではないため、債務者からの回収は時間と費用がかかります。
そこで、実務的には、債権額を減額してでも、裁判での和解に持ち込んで、早期解決を図る場合が多いです。
また、和解以外でも、相殺や債権譲渡、債権者代位、代物弁済等の方法、及びこれらの組み合わせが可能である場合があります。債務者から直接金銭の支払いを受けるのと同様の効果が得られますが、法律の正確な理解が不可欠です。
さらに、債務者の支払能力の状態によっては破産手続開始後、これらの契約が「偏頗弁済」として否認されるおそれがあります。
このような徒労に終わらないためにも、一度弁護士にご相談ください。