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定義条項(Definitions)とは,契約書で繰り返し使用される重要な用語(terms)や契約当事者で解釈が分かれるような用語について,意味内容を明確にするための条項です。
英文契約書における一般条項(general terms)の1つであり,契約書の第一条に置かれることが多いです。
契約書がLOI(レター・オブ・インテント)のような短いレター形式の確認書によって作成され,本文中で定義する場合や,長年にわたって取引関係が築かれており,契約当事者で用語についての解釈が分かれないような場合には,定義条項が置かれないこともあります。
英文契約書において,定義条項は非常に重要となる場合があります。
例えば,下の例文をご覧ください。
「30日以内」は,“within thirty (30) days”と表現していますが,単に“days”であると,土曜や日曜も含まれるのか,最終日が祝日であった場合どうなるのかといった問題が生じます 。
国際電信送金は,通常1営業日以内に処理され,送金されますが,送金が金曜日の遅い時間に開始された場合は,翌週の月曜日にならないと着金しない可能性があり,月曜日が祝日の場合は翌営業日となってしまいます。
そのため,“day(s)”という用語1つをとってみても,土・日や祝日も入れて数える場合には,“calendar day(s)”と表現したり,休日を除いた営業日のみを数える場合には,“business day(s)”と表現したりする必要があります。
定義条項で,単に“day(s)”という場合には,”calendar day(s)”,あるいは“business day(s)”をいうと定義付けておくと,契約当事者の食い違いを回避することが可能となるでしょう。
このように,英文契約における定義条項は,将来の紛争を回避するというリスクマネジメントの一環として,非常に重要であるといえます。
なお,上記例であげた“dollars”(ドル)という用語についても,カナダドルやオーストラリアドルなどと食い違いが生じやすい用語です。
例文では,“U.S. dollars”として,アメリカドルであることを明確にしていますが,契約書で何度も使用される場合には,定義条項において“Dollar”を定義付けする場合もあります。
ここでは,英文契約書における例文を挙げつつ,注意点すべき点を説明します。
通常,定義条項は契約書の第一条に置くことが多く,項目番号を振ったりアルファベット順に並べたりして,確認しやすいように規定します。
実際の契約書では, “unless the context otherwise requires”というフレーズを入れている場合もあります。
これは,「文脈上別段の意味合いがない限り」という例外を設けるための英文です。
契約書において,どうしても定義づけた意味とは別の意味で解釈しなければ不都合である場合があり,そのような不都合を回避する手段として用いられることがあります。
しかし,定義づけた意味とは,別の意味で解釈することを認めるものであることから,どうしてもという場合を除いては,用いない方が良いでしょう。
「語句および表現」を表す“words and expressions”については,“terms”という表現を用いることもできます。
「関係者」や「関連会社」を表す“Affiliate”,「支配」を表す“control”などの用語は,契約当事者間で解釈が異なりやすい用語であり,定義付けが特に重要となります。
例えば,「支配」について,保有する株式が50%で足りるのか,過半数が必要となるのかといった点は,必ず明確にしましょう。
上記例では,本契約に先立ち,法的拘束力のある秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement, NDA)を締結するシーンを想定し,本文中で「秘密情報」についての定義付けをしています。
秘密情報を表す“Confidential Information”は,その内容について争いが生じやすく,定義付けによって権利義務の内容が定まるため,特に注意が必要です。
自社の秘密情報を守るだけでなく,契約の相手方から損害賠償を請求されないためにも,広すぎず狭すぎない適切な定義付けを行いましょう。
秘密保持契約については,以下の記事で詳しく説明しています。
関連記事:海外企業との秘密保持契約(NDA)で注意すべき7つのポイント
今回は,英文契約における定義条項の重要性などについて解説しました。
英文契約における定義条項(Definitions)とは,契約書で繰り返し使用される重要な用語(terms)や契約当事者で解釈が分かれるような用語について,意味内容を明確にするための条項です。
契約書の意味内容を明確にし,契約書を読みやすくするという側面のみならず,将来の紛争を回避するというリスクマネジメントの一環として,非常に重要であるといえるでしょう。
定義付けによって直接に権利義務の内容が定まることもあるため,注意しなければなりません。
英文契約書の作成やレビューは慎重に行いましょう。もし,英文契約書でご不明な点がございましたら,お気軽に当事務所までお問い合わせください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
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