受付時間:8:30~19:00(土日祝日も営業)
目次
相殺条項(Set-off)は,国際取引において,相殺が認められるために必要となります。
相殺とは,契約当事者が互いに同種の債権を持つ場合,一定の条件のもとで,それぞれの債権を消滅させることです。
例えば,A社がB社に対して100万円の売買代金債権を有し,B社がA社に対して100万円の貸金債権を有するとします。B社が期日になってもA社に売買代金である100万円を支払わない場合,A社は一方的な意思表示によって,お互いの債権を消滅させることができ,借りた100万円を別途返す必要がなくなります。
このような相殺は,簡易決済を実現し,債権回収のリスクを軽減するという機能を有することから,様々な取引において頻繁に利用されます。
しかし,常に相殺を認めてしまうと,現実に入ってくるはずであった現金が入ってこないため,取引によっては,相殺禁止条項(No Set-off)を設けることもあります。
日本の民法では,法律が定めた要件を満たす(相殺適状にある)場合,一方当事者による意思表示によって相殺が認められます。
他方で,国際取引においては,契約の段階で適用法の決定や内容が不明確なことも少なくありません。
そのため,契約書に相殺条項や相殺禁止条項を定め,相殺する権利の有無を明確にしておく必要があるのです。
引用:民法 | e-Gov法令検索
ここでは,英文契約書における一般的な相殺条項を挙げて解説します。
上記例では,買主が相殺または留保する権利を有することを定めています。
相殺の対象を関連会社にまで拡大している場合は,親会社や子会社などに対しても相殺する旨の主張がなされる可能性があるため注意しましょう。
上記例では,原則として,買主が相殺または留保する権利を有しないことを定めています。
もし,自社が買主である場合には,売主に対する債権が回収できなくなるリスクが生じます。
必ず英文契約書の内容を精査したうえで,契約書にサインするようにしましょう。
関連記事:英文契約書レビューの基本:確認ポイントや英文契約書の構成を弁護士が分かりやすく解説
商品に欠陥があったというクレームを提起して,買主が商品代金の支払いを拒絶し,クレーム請求額と商品代金との相殺を主張することがあります。
クレームの内容が正当なものかどうか判断する前に,商品代金が支払われないことになりかねません。
そのような事態を回避すべく,クレーム請求額による相殺を認めないことを内容とする規定を置くことがあります。
相殺が認められるには,原則として,相手方が負っている債務の期日(弁済期)が到来していることを必要とします。
相殺は,相手方の債務を強制的に実現させるものであり,仮に期日前に相殺を認めると,結果として,債務の期日を早めたことと同じになってしまうためです。
このように,期日までは債務を履行しなくてよい権利のことを「期限の利益」と表現します。
相手方が期限の利益を有する場合,原則として,相殺は認められません。
しかし,契約の相手方に信用不安などの一定の事由が生じた場合,相手方の債務の期日が未到来であると相殺を行えず,債権回収のリスクが高まります。
そのような事態を回避するため,一定の事由が生じた場合には期限の利益が喪失し,直ちに弁済期が到来することを契約書に定めておくことが重要です。
どのような場合に相殺が認められるのか,必ず契約書で明確にしておきましょう。
基本的に,相殺は,一方当事者の他方当事者に対する意思表示によって行われます。
この場合,意思表示の通知手段や通知先などをあらかじめ明確に定めておくことで,トラブルを回避することができるでしょう。
また,唐突に相殺されるリスクを失くすために,相殺を主張するには事前の協議を要することを定める場合もあります。
契約書に,相殺の方法や手続きを詳細に定め,いざという場合に備えましょう。
今回は,英文契約書における相殺条項(Set-off)の必要性や注意点などについて解説しました。
相殺条項(Set-off)とは,契約当事者がお互いに同種の債権を持つ場合,一定の条件のもとで,相殺する権利を認めることを内容とする条項をいいます。
相殺は,簡易決済を実現し,債権回収のリスクを軽減するという機能を有することから,取引において頻繁に利用されます。
しかし,国際取引では,契約時に適用される法が不明確な場合も少なくないため,あらかじめ契約書に相殺の権利があることを明記しておきましょう。
その際には,トラブルを回避するため,相殺の条件や方法,手続きなどの詳細についても取り決めておくことが重要となります。
相殺条項は,交渉や契約内容に応じて様々であり,本文中に取り上げた記載例は,ほんの一例に過ぎません。
自社にとって予期せぬ事態を生じさせないよう,契約書のレビューは慎重に行いましょう。もし,英文契約書でご不明な点がございましたら,当事務所までお気軽にお問い合わせください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
ご相談など、お気軽にお問い合わせください。
06-4394-7790受付時間:8:30~19:00(土日祝日も営業)