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解雇とは、使用者が労働契約を解約することをいいます。
一言に解雇といっても、普通解雇と懲戒解雇では大きく異なります。
解雇は、従業員の生活に大きく影響を与える重大な行為ですので、解雇の有効性をめぐってトラブルが絶えません。
それぞれの違いを知ることで、適切に対応し、解雇の有効性をめぐるトラブルを事前に防ぐことができるでしょう。今回は、普通解雇と懲戒解雇の違いについて詳しく解説します。
目次
解雇には、大きく分けて、以下の3種類があります。
普通解雇とは、従業員の能力不足や勤怠不良、協調性の欠如、病気やけがによる就業不能など、主に労働者の原因に基づく解雇をいいます。
例えば、労働者が何度も遅刻を繰り返し、勤務態度が悪く、注意しても改善の見込みがないといった場合に行われる解雇です。
整理解雇とは、経営上の理由から人員削減のために行われる解雇をいいます。
いわゆる「リストラ」にあたります。
企業の経営上の理由による解雇である点が特徴です。
経営上の理由には、経営不振や業績悪化、事業所の閉鎖などが挙げられます。
従業員に責任があるわけではないため、厳しい基準のもとで有効性が判断されます。
懲戒解雇とは、懲戒処分として行われる解雇をいいます。
企業には、企業内の秩序を維持するための懲戒制度が認められています。
例えば、従業員が経歴を詐称していたり、無断欠勤を繰り返す、業務命令に従わないといった場合に、会社が制裁として懲戒処分を行います。
懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も厳しい処分ですので、就業規則にあらかじ懲戒事由を定めておくなど、厳格な規制が置かれています。
関連記事:懲戒解雇は最終手段!会社側が抱える3つのデメリットとは?
普通解雇も懲戒解雇も、客観的に合理的な理由が必要であり、その理由が従業員に起因するという点では共通します。
しかし、基本的には以下の点で異なる場合があります。
企業が従業員を普通解雇するにあたっては、解雇日の30日前までに解雇予告する必要があり、予告しない場合には、原則として、30日以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条)。
一方で、懲戒解雇にあたっては、このような解雇予告や解雇予告手当を必要としない場合があります。
懲戒解雇の場合は、従業員が即時に解雇されてもやむを得ないほどの職務規律違反や背信行為が認められる場合があるためです。
引用:労働基準法|e-Gov 法令検索
企業が退職金制度を定めている場合、普通解雇では退職金規程に定められている退職金を支払う必要があります。
しかし、懲戒解雇の場合には、退職金の全部または一部を支給しないことが認められる場合があります。
例えば、退職金規程の中で、懲戒解雇の場合には退職金の全部または一部が支給されないことが定められており、懲戒解雇の対象となった職務規律違反行為などが重大な場合です。
解雇は、客観的に合理的な理由があり、解雇することが相当であると認められる場合でなければ無効とされます。
引用:労働契約法|e-Gov 法令検索
以下では、普通解雇と懲戒解雇それぞれにつき、解雇が有効なものと認められ得る具体的なケースをご紹介します。
以下のようなケースでは、普通解雇が有効とされる可能性があります。
上記ケースに当てはまるからといって、ただちに普通解雇が有効とされるわけではありません。
事案ごとに具体的な事実に基づいて、客観的に合理的な理由があるか、解雇することが相当であるといえるか判断されることになります。
労働能力の低下については、労働契約を継続することが困難とするほどの重大な能力低下がなければならず、企業側が改善策を講じたのか、従業員に改善する意欲があるのかといった具体的な事実によって判断されることに注意しなければなりません。
他のケースについても同様に、改善の見込みや従業員の態度、企業側の対応といった様々な事情によって、解雇の有効性が判断されます。
懲戒処分は、就業規則に懲戒事由と種別が規定され、従業員に周知されていて初めて行うことができます。
懲戒事由に以下のようなケースが定められており、従業員の行為がこれに該当すると認められる場合には、懲戒解雇が有効とされる可能性があります。
普通解雇と同様に、上記ケースに該当するからといって、ただちに懲戒解雇が有効とされるわけではない点に注意が必要です。
例えば、重大な経歴詐称といっても、最終学歴や職歴、犯罪歴など様々ですが、懲戒処分の対象となる従業員の職種などに即して具体的に判断されることになります。
また、無断欠勤について、判例は、企業が精神科医による健康診断を実施してその診断結果に応じて休職などの措置を検討し経過をみるなどの対応をとるべきであり、このような対応を企業が怠った場合は、懲戒事由に該当する「無断欠勤」にあたらないとしています。
解雇するにあたって、適切な手続きを経ることは非常に重要です。
適切な手続きを怠れば、解雇が無効となる可能性があるため注意しましょう。
普通解雇と懲戒解雇の具体的な手続きは、以下のようになります。
普通解雇が客観的に合理的な理由があるといえるには、従業員から事情を聴取し、正確な事実に基づいて判断したことを必要とします。
例えば、なぜ遅刻するのか、改善することはできないのかなどの事情を従業員から聴き取りましょう。
注意や指導を行わず、いきなり解雇することは基本的に認められません。
解雇する前に、まずは注意や指導を行いましょう。
口頭のみならず、書面やメールなどで行うことで、注意や指導の理由が明確となり、証拠として残すこともできます。
注意や指導を行っても改善がみられず、解雇することがやむを得ないと判断される場合には、解雇予告を行います。
即時解雇する場合には、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払って、解雇の通知を行います。
天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合や、労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合には、解雇予告手当を支払わずに即日解雇することができます。
この場合には、行政官庁の除外認定を受ける必要がありますので、解雇予告除外認定を申請することになります。
懲戒事由に該当する可能性のある事案が発生した場合には、当該行為が実際に懲戒事由に該当するのか調査する必要があります。
従業員の行為が就業規則に定められた懲戒事由に該当するといえるのか、慎重に調査を行いましょう。
過去に同様の行為で懲戒処分となっていないかも確認しておく必要があります。
後日紛争となった場合には、事実の有無を客観的に判断できる証拠が必要となりますので、この段階で集めておきましょう。
普通解雇と同様に、従業員から聴き取り調査を行い、従業員に対して弁明の機会を設けます。
調査した事実とは異なる事実が判明した場合には、証拠や証言などから慎重に判断を行いましょう。
決して企業が調査した事実を認めさせるような高圧的な態度を取ってはいけません。
調査に基づいて認定した事実,本人の反省具合や会社に与える影響などを総合的に考慮して、懲戒解雇することがやむを得ないと判断する場合には、懲戒解雇を決定します。
企業としては、従業員に対し、懲戒解雇という一番重い処分を下す理由を明確に説明できるようにしておく必要があります。
従業員に対し,懲戒解雇の理由を明記した懲戒処分通知書を交付します。
就業規則に懲戒処分通知書の交付が規定されていない場合であっても,従業員に最終的な確認をさせ,今後の行動を改善させたり後日の紛争を防いだりするために交付することをお勧めします。
解雇は従業員の生活に重大な影響を与えることを考慮して、様々な規制が加えられています。
すでに説明した解雇予告や解雇予告手当の支払いもその1つです。
その他、従業員が業務上の負傷や疾病による療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇してはらないとする規制や、産前産後休業の期間およびその後の30日間は、その労働者を解雇してはならないとする規制もあります(労働基準法19条1項)。
また、国籍や信条、性別などに基づいた差別的な解雇なども規制されています(労働基準法3条、雇用機会均等法6条)。
解雇の有効性を企業自身で判断することは難しい場合もありますので、従業員の解雇をご検討される場合には、一度、弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。
今回は、普通解雇と懲戒解雇の違いについて解説しました。
基本的な違いとしては、解雇予告や退職金の有無です。
また、解雇が認められ得るケースや手続きについても違いがあります。
解雇は従業員の生活に重大な影響を与えるものであり、その有効性をめぐってトラブルが絶えません。もし、従業員の解雇についてご不明点がございましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ
金﨑 正行弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
交渉や労働審判、労働裁判などの全般的な労働事件に対応をしてきました。 ご相談いただく方にとって丁寧でわかりやすい説明を心がけ、誠心誠意、対応させていただきます。 お困りの方はお気軽にご相談ください。
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