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共同研究開発契約は,複数の企業や研究機関が新製品や新技術の開発・改良などを協力して行う場合に締結される契約です。
共同研究開発研究は,各企業などがそれぞれの技術やノウハウといった強みを持ち寄り,効率的な開発を行うことを目的とします。
海外における共同研究開発契約書では,国内における共同研究開発契約書と比べ,以下の点に注意する必要があります。全ての国際的な契約においては関連する国の法令に留意する必要がありますが、共同研究開発においては、特に知的財産権に関する法令等に留意する必要があります。
例えば,契約書において, 共同研究開発によって生まれた成果を共有することにし,共同である国に特許出願することにしたとします。契約書においてそれ以上なんら定めがない場合,日本法に基づいて考えると,他の契約当事者の同意なしに,共有の特許の第三者への実施許諾(通常実施権,専用実施権)や持分の譲渡などはできませんが,他国では必ずしも同意が必要とされていない場合があります。
このような違いに留意しながら、契約書にどこまで規定するのか、準拠法や紛争解決手段をどうするのか等を検討しなければなりません。
海外企業と共同研究開発契約を締結した際,以下のような法的トラブルに巻き込まれる可能性があります。
例えば、米国では 、ECRA法(Export Control Reform Act)の下位法令であるEAR(Export Administration Regulations)に基づき、一部の技術や製品の輸出が制限されています。米国以外の国から第三国へ再輸出する時にも適用(域外適用)されるため,米国製品を扱う日本企業も注意しなければなりません。
また、日本でも、外為法(正式名称「外国為替及び外国防衛法」)に基づく輸出規制が存在し,規制対象となっている「貨物の輸出」や「技術の提供」をする場合には,経済産業省の許可が必要となります。
これらの規制に違反すると、罰則が科せられることがあります。そのため、共同研究開発契約を行うことを検討する際には、事前に、輸出規制に関する情報を双方で共有し、遵守することが重要です。
参考:米国輸出規制|International Trade Administration U.S. Department of Commerce
特に問題となるのは,バックグラウンドIP(共同研究開発の前からそれぞれが所有する知的財産)の扱いです。
自社のバックグラウンドIPが共同開発を通じて得られた成果と混同してしまうと,後々,共同開発の相手方から,共同開発を通じて得られた成果であり相手方にも全部または一部の権利が帰属するなどと主張されてしまい,トラブルが生じるおそれがあります。
また,自社のバックグラウンドIPの価値が非常に高い場合にもかかわらず,共同開発によって得られた技術を自社の製品とは全く無関係のところで使用されるおそれもあります。
秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement,NDA)を締結していたとしても,相手企業の悪意ある接触や秘密情報管理の不徹底によって情報が漏えいしてしまうなど,トラブルへと発展してしまう可能性があります。
特に,海外企業と共同開発契約を締結した場合の問題としては,海外に本拠地を置く相手企業が勝手に相手国で特許出願を行い,共同研究成果に関する情報が漏えいしてしまうことがあります。
情報漏えいについては,自社の情報が漏えいしてしまうケースに限らず,自社が意図せず相手企業の秘密情報を漏えいしてしまい,訴訟の被告になるというケースもあります。
上に挙げたトラブルは一例にすぎませんが,法的トラブルを回避するためには,以下のような対策が考えられます。
輸出管理規制にかからないようにするには,安全保障貿易管理の体制構築が必要となります。
安全保障貿易管理では,我が国を含む国際的な平和及び安全の維持を目的として,武器や軍事転用可能な技術や貨物が,我が国及び国際的な平和と安全を脅かす恐れのある国家やテロリスト等,懸念活動を行う恐れのある者に渡ることを防ぐため,先進国を中心とした国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)を作り,国際社会と協調して輸出等の管理を行っています。
外為法をはじめとする安全保障貿易管理に関連する法令等は,外国企業との連携活動の際に起こりうる技術兵法の提供や人的交流等において,必ず関係する法令・規則であり,先端的な研究開発を行う企業などの研究者は必ず遵守しなければなりません,
輸出管理にあたっては,最新の法令で規制されているかを確認する該非判定,取引先とのやり取りやHPなどから懸念はないか確認する取引審査,貨物や技術の同一性,許可の有無があるかなどの最終確認を行う出荷管理の3つが特に重要となります。
1つでも怠ると,懸念取引への巻き添えへと繋がり,法令違反のリスク,罰則や行政制裁への対象ともなり得るに加え,企業名の公表によってイメージの低下社会的信用が失墜する可能性もありますので,正しい知識の習得と社内ルールや仕組み作りが重要となります。
安全保障貿易管理の体制構築等について詳しく知りたい場合は,経済産業省のホームページで詳しく説明されていますのでご参考ください。
参考:安全保障貿易管理|経済産業省
安全保障貿易管理ガイダンス [入門編]|経済産業省
知的財産権に関するトラブルを回避するためには,知的財産権の帰属や実施につき詳細な規定を設けることが重要です。
知的財産権に関する契約条項は,決まった形があるわけではありません。知的財産権の帰属やその実施については当事者間の交渉によって定まるため,契約ごとに内容が異なります。
一般的な例として,①各当事者が提供した技術や製品は,それを提供した各当事者に帰属する,②共同研究開発の過程において単独で開発した技術や製品については,その開発した当事者に帰属する,③共同で開発した技術や製品については,当事者間の共有になるといった条項を定めます。
ただし,この場合でも,各当事者が単独で開発したのか,共同で開発したのかが不明であり,食い違いが生じる場合もあるため,契約書において各当事者のバックグラウンドIPをできる限り列挙するなどして,さらに詳細に定めておくことが必要となる場合があります。
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海外企業に限ったことではありませんが,特に海外企業との共同研究開発においては,相手方となる相手企業の選定は,慎重になる必要があります。
情報漏えいによるリスクは,NDAの締結によってある程度抑えることが可能ですが,海外の相手企業が当初から自社の秘密情報を得る目的で接触してくる場合もありますし,そのような目的でないにしても,従業員の入れ替わりが激しい企業である場合には,退社した相手企業の従業員によって自社の秘密情報が流出してしまうリスクもあります。
相手方がどのような企業であるのか,どのような情報管理体制を整えているのかという点は,自社の秘密情報を守るうえで非常に重要となりますので,相手企業の選定は慎重に行う必要があります。
相手企業の選定を行ったうえで,本当にNDAを締結すべきかどうか,どのようなNDAを締結すべきか検討しましょう。
また,秘密情報の開示が想定される場合には,開示可能な秘密情報をあらかじめ分別しておき,特に,秘密保持契約の範囲で開示する情報と,共同研究契約締結後,研究開始時に開示する情報を区分しておくことが必要です。
第三者から受領した秘密情報がある場合は,より慎重な対応が必要となります。
秘密情報の保護に関しては,経済産業省が公開している秘密情報の保護ハンドブックが参考になりますので,一度ご参考ください。また,NDAに関する注意事項については,当事務所のコラムにて解説しています。
参考:秘密情報の保護ハンドブック|経済産業省
関連記事:海外企業との秘密保持契約(NDA)で注意すべきポイントとは
海外企業との秘密保持契約(NDA)で注意すべき7つのポイント
今回は,海外企業との共同研究開発における契約書の特徴とよくあるトラブル,その対処法について解説しました。
海外企業と連携して共同研究開発を行うにあたっては,英文契約書によって共同研究開発契約を締結します。日本企業間における日本語での契約書とは,解釈や必要となる条項について異なる点もありますので注意が必要です。
また,共同研究開発における技術や製品の提供にあたっては,各国の輸出規制にかかる点についても注意しなければなりません。規制対象となっている場合は,それぞれの国で許可が必要となる場合があります。
輸出規制に関しては,第三国による域外適用を受ける場合もありますので,必ず相手企業と情報を共有し,法令を遵守するようにしましょう。
知的財産権の帰属や秘密情報の漏えいに関しては,相手企業の慎重な選定を前提として,出来る限り契約書に詳細を定めておき,トラブルを未然に防ぐことが重要です。
国内,海外問わず,共同研究開発についてご不明な点があれば,当事務所までお気軽にお問合せください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
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