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ライセンス契約とは,知的財産で保護されている特許・商標・意匠・著作物・ノウハウなどの実施・使用を第三者に許諾する内容の契約です。
起業が海外へ進出する場合,子会社や現地法人の設立といった直接投資,ノウハウなどをフランチャイジーに提供して事業を運営するフランチャイズ契約などといった様々なビジネスモデルが考えられます。
ライセンス契約もまた,企業が海外進出する上でのビジネスモデルの1つといえるでしょう。
では,海外でライセンス契約を行う際,どのようなメリットがあるでしょうか。
海外でライセンス契約を締結するメリットの1つは,海外進出するにあたって,コストを抑えることができることです。
ライセンシー(許諾を受ける側)がライセンスを実施・使用して事業を展開してくれるため,自社で人員を確保したり,現地に販売店を置いたりする必要がありません。
ライセンサー(許諾を与える側)は,契約で取り決めたロイヤリティ(対価)を継続して得ることができます。
自社で製品開発や販売を行う必要がないため,自社に知的財産を有効活用するだけの技術力や設備がない場合であっても,収益を得ることが可能です。
現地に店舗を展開し流通させようと思っても,その方法を調査・実施するには,相当な時間と費用がかかります。
また,相当な時間と費用をかけたとしても,うまく現地に定着し,自社のブランドを流通させることができるかは分かりません。
しかし,現地のライセンシーは,現地に合わせた流通ノウハウを持っていることが多く,自社の製品を現地に定着させやすいといえるでしょう。
海外でライセンス契約を行うにあたっては,メリットばかりではありません。
海外でのライセンス契約に潜むリスクを把握しておきましょう。
秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)を締結したことで安心し,相手から要求されるがまま技術を開示し,自社の技術が海外において流出してしまうことがあります。
海外企業は,交渉の段階で欲しい情報が手に入れば,ライセンス契約にまでいたらずに交渉を終わらせることも珍しくありません。
そのような場合,ライセンス契約によって利益を得るどころか,自社の技術だけが流出してしまう可能性があります。
ライセンス契約の内容によっては,契約相手である海外企業の製品やサービスについて,口を挟むことはできません。
そのため,ライセンシーによる使用・実施の仕方によっては,自社のブランドイメージが損なわれてしまう可能性があります。
ライセンスの使用・実施を許諾したとしても,ライセンシーがそのライセンスに基づいて,製品を製造したり販売したりするとは限りません。
そのような場合に,ロイヤルティの算定を売上げの何%としても収入を得ることはできません。
海外でのライセンス契約に潜むリスクを回避すべく,以下の点について注意しましょう。
自社がライセンサーである場合,ライセンス契約をするにおいて,最も注意すべきポイントの1つです。
例えば,相手企業の情報管理体制が甘いと,たとえ秘密保持契約を締結していたりサブライセンス契約(ライセンシー以外の第三者に使用を許諾する契約)を締結していなかったりしても,技術が流出してしまいかねません。
また,自社が想定していない形で使用されると,ブランドイメージが大きく損なわれる可能性があります。
さらに,ライセンシーが技術などを使って商品を製造し販売する場合には,商品が売れなければロイヤリティが入ってきません。
そのため,ライセンス契約において,契約相手は非常に重要となってきます。
海外取引においては,交渉の段階で自社の情報を開示しすぎてはいけません。このことは,秘密保持契約を結んだとしても同様です。
自社の技術やノウハウを開示することによって自社の強みを見せることができるため,交渉において強気に出ることができるという側面はあります。
しかし,海外企業の中には,単に技術やノウハウを盗み取ることを目的とするものも存在します。気付いたら自社の技術が同業他社に使われているといったことも珍しくありません。
契約締結に至るには,技術やノウハウを直接見せなくとも,それらを基に作られたデータやサンプルを見せることで十分です。情報を開示し過ぎることは,交渉において弱腰であると判断され,足元をすくわれる結果になりかねません。
関連記事:海外企業との秘密保持契約(NDA)で注意すべき7つのポイント
海外取引における英文契約全般に言えますが,自社で契約書のドラフトを作成することをお勧めします。
先進的な海外企業は,その多くが自社で契約書の雛型を用意しており,即座に個別の契約に沿ったドラフトを提示できます。取引の相手方が提示してくる契約書は,基本的に相手方に有利に作られていることから,契約上のリスクを回避し,自社に有利な契約を締結するためです。
交渉の優劣によってはドラフトを提示できない場合もありますが,あらかじめ雛形を用意しておき,機会があれば率先して作成・提示するようにしましょう。
英文契約書の作成にあたっては,英文契約を専門としている弁護士や法務担当に任せることをお勧めします。
関連記事:英文契約書レビューの基本:確認ポイントや英文契約書の構成を弁護士が分かりやすく解説
過去の契約書は,「妥協の産物」と言われることがあります。
契約当初から過去の契約書を使いまわし,提示することは,初めから妥協した条項が含まれる契約を申し込むということになってしまいます。
相手が受け入れそうにない条項であっても,まずは強気で交渉に臨むべきであり,あえて切り札を持っておくことも重要です。
Grant条項とは,ライセンス許諾条項(Grant of License)のことで,ライセンス契約の柱となる条項です。
ライセンスの内容や範囲を決めるもので,特に,独占ライセンス(Exclusive license)であるか,非独占ライセンス(Non-Exclusive license)であるかという点は,ライセンス契約の利益に大きな影響を及ぼします。
しかし,英文契約書における「Exclusive license」という言葉は,国際的に法的な意味が確立されているわけではないため,当事者の解釈の違いからトラブルへと発展してしまう可能性があります。
そのため,独占ライセンスとする場合には,単に独占ライセンスであることを明記するのではなく,どういう点において独占的であるのかを具体的に定めることが肝要です。
ライセンスの対価としては,頭金としての「イニシャル・ペイメント」(initial payment),定められた算定方法に基づき,一定期間ごとに支払われる「ランニング・ロイヤルティ」(running royalty),一定期間ごとに支払われる最低使用料としての「ミニマム・ロイヤルティ」(minimum royalty)などがあります。
ライセンスの対価は,ライセンサーとライセンシーの間で起こる解釈の違いによって紛争になりやすいため,具体的に定める必要があり,収益を予想して慎重に設定する必要があります。支払い方法や頻度についても同様です。
例えば,イニシャル・ペイメントについては,返還不能(non-refundable)とするのが一般的です。
また,ランニング・ロイヤルティについては,総販売額を算定ベースにすることが多いですが,総販売額とは何かという定義付けは非常に重要となります。総販売額から控除すべき項目が多いほどライセンサーにとって有利となりますし,ライセンサーからすれば少ない方がよいでしょう。
販売不振を懸念する場合などに設定されるミニマム・ロイヤルティについても,ランニング・ロイヤルティがミニマム・ロイヤルティを超過した場合の取り扱いなどにつき,詳細に取り決める必要があります。
ライセンスの対価を設定する条項は,自社の収益に直接影響を与えるものですので,販売不振やブランドイメージ,信用なども踏まえ,慎重に設定するようにしましょう。
ライセンス契約によって使用許諾を受けた技術などが改良され,新たな技術や発明品が生まれた場合,特許出願によって,公開したくなかった技術が公開されてしまう可能性があります。
改良すること自体を制限することは,各国の独占禁止法に抵触する可能性があるため困難です。
そのため,自社の技術が漏れないよう,改良によって新たな技術や発明品が生まれた場合には報告するよう契約書に含め,自社が公開したくない情報が含まれていないか確認できるようにしておくことが重要です。
今回は,海外でライセンス契約を行う際に知っておくべきリスクと注意すべきポイントについて解説しました。
海外でライセンス契約をする場合には,コストを抑えて海外進出を図ることができ,継続した収入を得ることが可能となります。
しかし,契約相手となるライセンシー次第では,自社の技術が流出してしまったり,ブランドイメージが損なわれてしまったりする可能性もあり,想定した収入を得ることすらできないというリスクもあります。
そのようなリスクを少しでも低減させるため,契約相手はしっかりと見極めましょう。
また,海外企業との交渉や英文契約書の締結という場面においても,注意すべき点は数多くあります。海外でライセンス契約をご検討の際には,英文契約を専門とする弁護士などに相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
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