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合弁契約は,二つ以上の会社が互いに出資し合って,それぞれの強みを持ち合い、合弁事業を遂行するための契約です。英語では誤解が生じないよう 、設立に関する契約書を“Joint Venture Agreement”(合弁契約),運営に関する契約書を“Shareholders Agreement”(株主間契約)とするのが一般的です。
日本企業が海外進出しようとする場合,国の法規制によっては外資による会社の設立が制限されていたり,現地のノウハウを一から取得するのに時間と費用がかかってしまったりと容易ではありません。そのため,海外企業と合弁契約を締結し,共に合弁事業を遂行することは,日本企業が海外進出する際に採りうる一つの手段となります。
他者との事業シナジーを狙うという点ではM&Aと似ていますが,M&Aは一方の企業の主導によって買収や合併が行われるのに対し,合弁契約は「協力関係を構築する」という点で,両者は異なります。
そんな海外企業との合弁契約には,以下のような特徴があります。
合弁契約において,パートナーの選定は非常に重要です。
パートナーが何を求めているのか,自社に何を提供してくれるのか理解しなければ,合弁事業の遂行はうまくいきません。
また,企業の財務状況やコンプライアンス状況などの情報を得て信頼できるのかを確認しなければ,自社が不利益を被ったり,自社の信用を低下させてしまったりする可能性があります。
そのため,意見交換やデューデリジェンスが実施されることがありますが,それでも相手が海外企業の場合には正確な情報を集めることが難しい場合があります。
合弁会社を外国で設立する場合,現地の外資規制にかかります。また,契約内容によっては,現地の会社法(欧州会社法やアメリカの州法など)をはじめとする法規制にかかる場合があります。
例えば,設立手続きに関する規定や株主総会の開催に関する規定,出資者の責任範囲に関する規定など,日本の会社法などと異なる点は多岐にわたります。
国によっては,そもそも法令内容を入手すること自体が難しい場合もあり,英語圏か非英語圏かによって情報の豊富さは異なるため,注意が必要です。
日本の企業間で紛争が生じた場合,最終的には,日本の裁判所にて,日本の法律に基づき,解決が示されることになります。
しかし,海外企業と合弁契約を締結し、紛争となった場合には、契約内容によって紛争解決の方法が異なります
話し合いによって解決できれば良いのですが、そうでない場合には、国際商事仲裁などを利用することが考えられます。また、契約で定められた裁判管轄条項に従って、日本の裁判所以外で訴訟となる可能性もあります。
関連記事:【メソッド】英文契約で仲裁合意を結ぶメリットと注意点を弁護士が解説
合弁会社を設立する際、非常に重要なポイントの1つです。
合弁会社における運営管理の方式は、契約に別段の定めがない限り、出資比率によります。
出資比率に関しては、2社間であれば均等に50:50とすることが多いですが、意思決定を迅速に行いたい場合などには、異なる比率による場合もあります。設立準拠法にもよりますが,企業経営にとって重要な意味を有する出資比率は,50:50,51:49,66.6:33.4,66.7:33.3,75:25であり,特に50%を超えるかどうかは大きな違いがあります。
しかし、出資比率が高いからといって、合弁会社の主導を握れるわけではないことに注意が必要です。両者の関係性によっては、実質的に主導権を握っているのが少数派なんてことも珍しくありません。
合弁会社の運営に関わる重要事項については,事前に全株主の同意を要するといった条項を設けておくことが一般的ですが,同意を得られない場合には後述するデッドロックに陥り,株式の買い取り等の問題に発展する可能性があります。
合弁会社において,株式の譲渡はパートナーの変更を意味するため,一般的に,契約において株式の譲渡を制限します。
通常,株式の譲渡制限は会社の承認を得なければなりませんが,合弁契約においては,「他方の株主の承認」を必要とすることを定めます。また,譲渡株式については,他の株主が優先的に株式を買い取ることができるという先買権を持つといった規定を置くこともあります。
運営管理の方式によっては,会社が意思決定できないデッドロックに陥ってしまう可能性があります。
そのような場合,一般的には,パートナー企業間で協議を行うことになりますが,協議で解決することが難しいこともあるため,予めデッドロックを破る方策を規定しておくことが肝要です。
例えば,撤退条件や解散の規定を設けることです。また,当初から取締役の数を奇数にし,一人をスウィングマン(swing-man)または仲裁人としての取締役とすることや,デッドロックの間は代表取締役に意思決定の権限を与え,その権限は当該取締役会の決議によってのみ取り消しうると規定することなどがあります。
海外企業との合弁契約において,撤退条項は極めて重要となります。
合弁事業が成功するケースもあれば失敗するケースもあり,たとえ成功していたとしても契約当事者の関係が悪化してしまうこともあります。必ず合弁契約を解消する時が来るため,予め解消の際のルール作りは欠かせません。
合弁契約を解消する際のルールを決めておくことによって,円滑な撤退が可能となるでしょう。また,合弁企業としての繋がりは解消されたとしても,今後もパートナーと良い関係を築いていくことができるかもしれません。
例えば,一定の目的を達成すること,累積損失が一定の金額を達成すること,一方に重大な契約違反があることなどを解散事由として設けることが考えられます。
合弁契約では,合弁契約に適用される法律と合弁会社に適用される法律を区別することができ,このような区別は海外企業との合弁契約において重要なポイントとなります。
例えば,現地側の企業としては現地法の適用を強く望みますが,自社としては現地法を合弁契約全体の準拠法として採用したくない場合もあるでしょう。
そのような場合,新会社の運営に関する事項についてのみ新会社の設立国とすることによって解決できることがあります。
関連記事:海外進出を考える中小企業担当者必見!英文契約の準拠法(Governing Law)講座
合弁契約においては,パートナーの選定が自社に大きな影響を及ぼします。そのため,パートナーの選定は非常に重要です。
パートナーを選定するにあたって情報収集は欠かせません。しかし,相手が海外企業である場合には正確な情報を収集することが困難な場合があります。日本企業との合弁契約よりも一層慎重になる必要があるでしょう,
また,選定にあたっては,パートナーとなりうる企業と十分な議論を尽くしたうえで,両者にとって最適な形態の合弁会社となるよう,会社間のシナジーを適切に評価することも重要です。
海外企業と合弁契約を締結するにあたっては,いかなる場合に,いかなる範囲で責任を負うのかを明確に定めておかないと,予測していなかった責任を負わされる可能性があります。
特に英文契約書の場合,言葉の意味一つを取ってみても,解釈の違いからトラブルとなることは少なくありません。
例えば,合弁契約書の表題です。表題は,”Joint Venture Agreement”とすることが一般的ですが,このような表題は,ストレート・ジョイントベンチャー(組合)あるいは”partnership”(パートナーシップ)と受け取られ,合弁会社の債権者から各パートナーが無限責任を負うとして責任追及を受けることもあるため注意しましょう。
海外企業の中には,技術やノウハウを得る目的で近づいてくる企業もあります。
契約交渉段階でコアな情報を公開してしまうと,合弁契約の話をしつつも契約締結には至らず,数年後に自社の技術やノウハウが使われているなんてことも珍しくありません。契約交渉の段階で秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)を締結していても安心できません。
契約交渉段階においては,自社の企業秘密を公開し過ぎないよう注意しましょう。
関連記事:海外企業との秘密保持契約(NDA)で注意すべき7つのポイント
今回は,海外企業との合弁契約の特徴やポイントなどについて解説しました。
日本企業が海外進出するにあたって,海外企業と合弁契約を締結することは,外資規制やコストの観点から一つの選択肢となり得ます。うまくいけば,パートナー企業とのシナジーによって,大きな利益が見込めるでしょう。
しかし,海外企業との合弁契約においては,日本企業との合弁契約と異なって正確な情報を集めることが難しい場合があるでしょう。また,英文契約特有の問題や現地の法規制に注意したりする必要があります。特に,運営管理の方式や撤退条項といった契約内容については,細心の注意を払わなければ,会社に不利益を与えかねません。そのため,海外企業との合弁契約をご検討の際には,英文契約を専門とする弁護士に一度相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
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