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システムやアプリといったソフトウェアの開発を海外企業に委託することを「オフショア開発(Offshore Development)」と言います。
近年,優秀なエンジニアの需要が高まる中,その数は不足しており,日本国内において優秀なエンジニアを確保することは困難となってきています。
そこで,優秀なエンジニアにソフトウェア開発を任せるべく,海外企業とソフトウェア開発委託契約(Software Development Agreement)を締結し,ソフトウェア開発を海外企業に委託するという手法が採られます。
執筆時点において,オフショア開発の委託先として最も人気のある国はベトナムであり,その割合は約50%となっています。次いでフィリピン,インド,バングラデシュ,中国,ミャンマーといった国が名を連ねます。
ベトナムが最も人気がある理由としては, IT人材の育成に国家として力をいれており,多様な開発スキルを持つ優秀な人材が多く,開発知識と日本語能力を併せ持つブリッジSEの存在や親日の国民性,人件費が日本に比べて低コストであること,日本との時差が-2時間などといった点が挙げられます。
ソフトウェア開発の委託契約は,請負契約やラボ契約といった種類の契約形態があり,どのような契約形態を選択するかについては企業によって異なります。
請負契約とラボ契約については,海外のエンジニアに対してソフトウェア開発を委託するという点では共通していますが,請負契約が「仕事の完成」を契約の目的としているのに対し,ラボ契約は「仕事の遂行」が契約の目的となります。
委託者が受託者に対し,発注した仕様や要件に基づき開発を行わせ,契約で定められた期限までに成果物を納品させることによって報酬を支払うことを内容とする契約です。
納品物の仕様や要件があらかじめ定められているため,比較的手間や時間がかからず,成果物が納品される可能性が高いという特徴があります。また,想定の予算内で収まりやすいという点も特徴として挙げられます。
もっとも,発注後に仕様変更があった場合には,追加で修正を依頼することは難しくなるため,契約書において仕様変更があった場合の対処法を盛り込む必要があります。
契約で定められた期間,海外のエンジニアで構成された専属チームを確保し,委託者の指示でソフトウェア開発のプロジェクトを進行させることを目的とする契約です。民法上,準委任契約に当たります。
委託者が自社でエンジニアを確保する手間や人件費を削減することができるため,開発コストが抑えられ,納品完了後に仕様変更があった場合であっても追加費用を発生させることなく容易に変更を行うことが可能です。
また,基本的に同じメンバーで開発が行われるため,一定期間において優秀なエンジニアを確保することが可能となり,クライアントのシステムや業務内容を理解することで,開発されるソフトウェアの品質向上を図ることができます。
もっとも,委託者が主体となって開発プロジェクトを進行させるため,開発を行うための環境整備等に時間や手間がかかってしまうなど,請負契約と比べて委託者の負担が大きくなるでしょう。せっかく整備した環境が無駄になってしまうため,短期間で終了しそうな案件には向いていません。
ソフトウェア開発を海外企業に委託する場合,以下のようなメリット・デメリットがあります。
オフショア開発における代表的なメリットです。
ソフトウェアの開発費用は,エンジニアの人件費が多くを占めています。
オフショア開発は海外の開発企業に案件を委託するため,現地の賃金水準が適用され,低コストでリソースを確保することが可能となります。
人件費に限らず,オフィスを借りる際の賃料や電気代といった費用についても抑えることができます。
近年,オフショア開発を検討する理由として最も多いのが,開発リソースの確保です。
国内の人材不足は,多くの企業で課題となっており,いかにソフトウェア開発の人材を確保するかが重要事項となっています。
このような人材確保の観点から,昨今のオフショア開発は,グローバルソーシングの意味合いが強くなっているといえるでしょう。
オフショア開発を通して,世界の最先端技術を活用することが可能となります。
例えば,基幹システム,AI,ブロックチェーンといった新たなテクノロジー分野やパッケージ開発などの高度な案件にも対応できる海外企業が増加しています。
最先端の専門知識や技術力を活かすことによって,競争力ある開発が可能となり,優位な立場を確保することに繋がります。
オフショア開発においては,リソースを柔軟に調整することが可能です。
特に,中・長期的なプロジェクトにおいては,平常時とピーク時の移り変わりが生じやすく,リソースを管理する重要性は高くなります。
プロジェクトの規模やニーズに合わせてリソースを最適化することで,効率よく開発を行うことが可能となります。
開発の委託先が海外となるオフショア開発では,言語や文化の違いから,コミュニケーションの問題が生じる可能性があります。
企業によっては,日本語に精通したメンバーもいますが,全員が日本語に対応しているとは限りません。
事前に想定されるリスクや対策を検討し,契約書に盛り込むようにしましょう。
また,委託者と開発チームとの間にブリッジSEを入れる場合には,慎重に選定することが重要です。
品質管理は,オフショア開発において避けて通れない問題の1つです。
納期や品質に関しては,日本企業の場合と同様の対応を求めることが難しいこともあるため,自社で定期的に管理を行うことが必要となります。
契約書において,検査や検収(Inspection)の方法,制限期間等を定め,もし検査・検収に合格しない場合には,受託者が無償でエラーを修正するなど記載することで,一定のリスクを回避することができるでしょう。
オフショア開発では,一定規模でないとコスト削減に繋がりにくく,国内で開発を委託した方が結果的にコストの削減に繋がる場合があります。
現在検討している開発が,国内委託に適しているのか,海外委託に適しているのか,適切な判断が求められます。
海外企業と取引する場合には,必ず為替や治安といったリスクが多かれ少なかれ存在します。
現地で暴動やストライキが生じた場合には,開発の中断や断念を迫られることも考えられます。
委託先の選定は慎重に行い,契約締結にあたっては,状況が変化した場合の取り決めを行う必要があります。
ソフトウェア開発の外部委託に関しては,仕様や要件を満たす成果物が物理的に目に見えないことから明確にエラーを確定することが容易ではなく,国内企業への委託であっても法的紛争が生じやすい類型の取引に当たります。
そのため,オフショア開発を実施する場合には,事前に想定されるリスクを検討し,交渉及び契約書作成の段階で対処可能な事項については,その段階でできる限り対処しておくことが大切です。
英文契約書の作成にあたっては,特に以下のような点に注意する必要があります。
契約上のトラブルが発生した場合に,日本と相手国のどちらの国の法律に基づいて解決するかという問題で,基本的に,当事者で合意し契約に規定することで決めることができます。
国によって規定の仕方や文言の会社が異なるため,一般的に,日本企業の立場からは日本法の適用を望むでしょう。
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紛争へと発展した場合,どのように解決するかは非常に重要な問題です。
話し合いによって解決できれば良いですが,裁判や仲裁による合意を求める場合には,裁判所や仲裁機関に解決を委ねることとなります。
その際,どの国で裁判や仲裁を求めるのかという取り決めが紛争解決条項です。
主な紛争解決条項としては,裁判管轄合意(jurisdiction)と仲裁合意(arbitration)があります。
日本企業の立場からは,日本の裁判所又は仲裁が望ましいことが多いですが,委託先となる国の国際条約加盟状況等によっては,日本の裁判所で判決を取得しても執行できないという問題が生じる場合もあります。
また,国によっては,むしろ当該外国の裁判所や仲裁による方が良いという場合もあります。
ソフトウェア開発委託契約の当事者は,通常,開発によって得られた成果物について委託者に権利を帰属させる意向があるため,著作権を受託者から委託者に譲渡すると定めることになります。
しかし,ソフトウェアは様々なプログラムを組み合わせたものであるため,ソフトウェアの開発にあたっては,既存のプログラムを利用することもあり,受託者が一部の著作権を留保する必要がある場合もあります。
そのような場合には,従来から受託者が保有していたプログラムを除いて委託者に帰属させるという取り決め や,委託者が受託者からソフトウェアのライセンスを受けて利用するという取り決めがなされます。
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ソフトウェア開発委託契約において,納品された製品の検査は非常に重要です。
支払条件では,検査に通過して初めて報酬代金の支払いがなされるといった規定が置かれることもあります。
ソフトウェアが委託者の求める仕様に適合しない場合,当事者はどう対応すべきであるのか明確に規定しておく必要があります。
開発委託契約において最も紛争へと発展しやすい問題は,成果物に不具合があった場合に,どのような範囲まで受託者が開発作業及び成果物に対して責任を負うのかという点です。
そのため,契約書において,受託者がどのような保証責任を負うのかを定めておきます。
日本の民法においては,損害賠償や契約解除,目的物の修補,代替物の引渡しといった契約不適合責任が規定されていますが,これによって十分な解決を図ることができるとは限りません。契約書において,案件ごとにより具体的かつ明確な責任範囲を規定しておくことをお勧めします。
受託者の再委託を認める場合にも,可能な限り責任を負う範囲を明確にしておきましょう。
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ソフトウェア開発の委託にあたっては,自社の秘密を開示する必要が生じるため,秘密保持条項を定めることになります。
ソフトウェア開発委託契約においては,委託者が受託者に対してソフトウェアの仕様や要件などを示し開発を委託する請負契約(請負型開発)があると説明しました。
このような場合には,委託者の企業秘密を開示することが前提となりますので,秘密情報を漏えいさせないため,秘密情報を管理する条項を定めます。
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今回は,ソフトウェア開発を海外企業に委託するメリット・デメリットや英文契約書上の注意点を解説しました。
海外企業に委託してソフトウェアの開発を行う場合,コストの削減やリソースの確保といったメリットがある一方で,言語や文化の違いからコミュニケーションの問題といったデメリットもあります。
また,基本的に英文契約書が用いられることになりますが,本文中に掲げた事項はソフトウェア開発委託契約で規定する条項の一部であり,その他にも注意する条項は存在します。
英文契約書においては,基本的に,契約書に書かれていることが全てという考えが前提であるため,あらゆる事態を想定したうえで具体的かつ詳細に規定する必要があります。ソフトウェア開発の海外委託をご検討の際には,一度専門家にご相談されることをお勧めします。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズハイ
永田 順子弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
国内取引のみならず、海外企業との取引を行う際の法務に携わってきました。 海外企業との英語・英文での契約書の作成・チェックを強みにしております。 海外進出・展開をお考えの方、すでに海外企業と取引があって英文の契約書を作りたい・ 見直したい方は是非一度ご相談くださいませ。
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