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就業規則とは,労働条件や職場内の規律などについて,会社が定める規則集のことです。
会社が発展し,従業員(社員)が増えていくと,労務管理の負担が増大します。
就業規則に労働条件を公平かつ統一的に設定し,職場規律を規則として設定することで,効率的な事業経営が可能になります。
日本では,就業規則が労働関係上とても大きな役割を果たしてるといえるでしょう。今回は,そんな就業規則について解説します。
目次
労働者が10人未満の企業において,就業規則の作成は義務ではありません。
法律上,就業規則の作成が必要な場合とは,常時10人以上の労働者を使用する場合です。
常時10人以上の労働者を使用するにもかかわらず,作成及び届出がされていない場合には,30万円以下の罰金が科される可能性があります。
引用:労働基準法|e-Gov 法令検索
常態として,10人以上を使用していることを意味します。
繁忙期のみ10人以上を使用しても,「常時」とはいえません。
10人以上か否かは,企業単位ではなく,事業場単位で計算します。
例えば,本社が8人,支店が3人の場合には,「10人以上」にあたらず,就業規則の作成義務はありません。
「労働者」には,正社員やパート,契約社員などの雇用形態の名称を問わず,当該事業場で使用されている労働者が含まれます。
例えば,正規社員が4人であっても,パートやアルバイトが6人いる場合には,合計10人以上ですから就業規則の作成義務があります。
正規社員の就業規則とパートやアルバイトの就業規則とを分けて作成することは可能です。
当該事業場において,常時10人以上の労働者を使用していない場合には,就業規則を作成する義務はありません。
しかし,厚生労働省は,10人未満であっても就業規則を作成することが望ましいとしています。
会社が就業規則した場合には,以下のようなメリットがあります。
就業規則は,労働条件や職場内の規律を定めたルールです。
従業員は,就業規則を確認することで職場のルールを把握することができます。
ルールが共有されることで,無用なトラブルを防ぐことができるでしょう。
いくらトラブルを予防していても,会社内で何らかのトラブルが起こることは避けれません。
職場内でトラブルが起こった場合,就業規則を指標に対応することが可能となります。
就業規則は有効である限り,裁判上でも問題解決の指標の1つとなり得ます。
就業規則に遵守事項やハラスメントを禁止する規程を設ければ,職場の秩序維持に大きな役割を果たすでしょう。
ハラスメント防止措置については,令和4年4月1日から義務化されたため,就業規則等の文書に規定し,労働者に周知・啓発することが必要です。
出張や配置転換などの業務命令は,就業規則に規定していなければ従業員に行わせることができません。
また,従業員の企業秩序を乱すような行為に対する懲戒処分も同様です。
就業規則に,業務命令や懲戒処分に関する事項を定めておくことで,それらを行うことが可能となります。
会社が就業規則を作成しない場合には,以下のようなデメリットがあります。
会社が急に成長すると,人員を増加せざるを得ません。
急な人員増加で従業員が10人以上となった場合には,遅滞なく就業規則を作成しなければなりません。
就業規則の作成を失念していると,労働基準法違反となり,罰金を科されてしまう可能性があります。
就業規則によって,労働条件を統一的に設定することが可能となります。
個別に労働条件を設定していると,労務管理の負担が大きくなります。
無断欠勤や職務怠慢などを繰り返す従業員に対しては,懲戒処分でしか対応できない場合があります。
しかし,減給や懲戒解雇などを行うには,労働契約上の根拠が必要です。
就業規則で定めておくことで,トラブルに対応できるようになります。
企業に対しては,国や地方公共団体による様々な助成金制度が存在します。
多くの助成金は,就業規則に特定の規程(記載)がなければ受給できません。
助成金を受給するためには,就業規則を設けておくことが重要となります。
就業規則では,具体的に以下のような内容を定めます。
法律上,就業規則に必ず定めなければならない記載事項です(労働基準法89条1号~3号)。
必ず記載しなければならない事項ではありませんが,特定の制度を設ける場合には記載する必要がある事項です(労働基準法89条3号の2~10号)。
絶対的記載事項や相対的記載事項に該当しない事項で,使用者が自由に定めた事項です。
法令や労働協約に反しない限り,就業規則に自由に定めることができます。
記載した内容は,労働契約の内容となります。
ここでは,就業規則を作成する上での8つのポイントや手続きをご紹介します。
就業規則は、事業場で働く労働者の労働条件や服務規律などを定めるものです。
当該事業場で働くすべての労働者について定める必要があります。
正規社員とパートやアルバイトとの労働条件を分けて定める必要がある場合には,適用を受ける労働者と適用が除外される労働者を明記しておきましょう。
既に「4 就業規則の具体的な内容」で述べましたが,就業規則には,必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)や,特定の制度を設ける場合には記載する必要がある事項(相対的記載事項)などがあります。
作成するにあたっては,抜け落ちることがないよう注意しましょう。
就業規則は、その内容が法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはなりません。
これらに反する就業規則は、その部分について無効となるため注意が必要です。
就業規則は,当該事業場の労働条件や職場内の規律などを定めるものです。
労使双方を拘束することになりますので,必ず実態に合った内容を定めましょう。
また,会社の状況などに応じて労働条件等は変化します。
常に実態に合ったものに改訂していく必要があります。
内容が複雑である,あるいは抽象的であるといった場合には,労使間で解釈等をめぐって争いが生じかねません。
就業規則は,誰でも理解できるように,分かりやすく明確なものにしましょう。
法律上,就業規則を作成し又は変更する場合には,労働者の代表の意見を聴かなければなりません。
労働者の知らない間に,一方的に労働条件や職場内の規律が変更されてしまうことを防ぐためです。
就業規則を作成し又は変更する場合には,必ず労働者の代表の意見を聴きましょう。
なお,労働者の代表とは,労働者の過半数で組織する労働組合,あるいは労働者の過半数を代表する者をいいます。
労働者の過半数を代表する者とは,管理監督者の地位になく,その事業場の労働者全員の意思に基づいて選出された者です。
就業規則は,労働者の代表の意見書を添付して,労働基準監督署長に届け出なければなりません。
届出先となるのは,本店、支店等の事業場ごとに、それぞれの所在地を管轄する労働基準監督署長です。
就業規則を作成しても,労働者全員に知らせておかなければ意味がありません。
法律上,会社には,作成した就業規則を各労働者に周知させる義務があります。
会社は,就業規則を各作業場の見やすい場所に常時掲示するなどの方法により,労働者に周知させなければなりません。
就業規則は,各事業場の実態に合った内容を定める必要があります。
初めて作成する場合には,内容や形式がよく分からないという方もいらっしゃるかと思います。
そこで,就業規則を効率的に作成する方法をご紹介します。
厚生労働省のウェブサイトでは,「モデル就業規則」を掲載しています。
この「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に,各事業場の実態に合った就業規則を作成することが可能です。
また,実際の作成にあたっては,厚生労働省が提供している「就業規則作成支援ツール」を活用すると良いでしょう。
「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に,「就業規則作成支援ツール」の入力フォームから必要項目を入力・印刷することで、労働基準監督署に届出が可能な「就業規則」を作成することができます。
参照:モデル就業規則について|厚生労働省
参照:就業規則作成支援ツールについて|厚生労働省
厚生労働省がウェブサイトで掲載している「モデル就業規則」は,あくまで参考とする一般的な規程例です。
各事業場の実態に合った就業規則を作成するには,内容を変更する,あるいは新たに規程を作成する必要があります。
しかし,法令や労働協約に反する内容の定めは無効となってしまいます。
また,規程の仕方や文言次第では,自社にとって不利益な規程を定めてしまうかもしれません。
社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談・依頼することで,自社の実情に合った有効な就業規則を作成することができるでしょう。
労働者が10人未満の企業において,就業規則の作成が義務ではありません。
しかし,トラブルの予防や職場の秩序維持という観点から,10人未満の企業であっても作成することが望ましいです。
就業規則を作成する際には,事業場の実態に合った内容を定めるようにしましょう。もし,就業規則の作成や変更でご不明な点がございましたら,当事務所までお気軽にお問い合わせください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ
金﨑 正行弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
交渉や労働審判、労働裁判などの全般的な労働事件に対応をしてきました。 ご相談いただく方にとって丁寧でわかりやすい説明を心がけ、誠心誠意、対応させていただきます。 お困りの方はお気軽にご相談ください。
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