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2024.03.05 2024年4月4日

【使用者必見】36協定の残業45時間を超えたら違反?超える場合の対処法

【使用者必見】36協定の残業45時間を超えたら違反?超える場合の対処法

「月の労働時間が45時間を超えたら違法になる」と聞いたことがあるかもしれません。

2019年4月に,労働基準法が改正され,時間外労働の上限規制が明文化されました。

「うちの会社は36(サブロク)協定を締結しているから大丈夫」と思っていると,いつの間にか違法となっているなんてことも珍しくありません。

今回は,36協定の内容や残業45時間を超える場合の対処法などについて解説します。

1 36協定とは何か?残業命令が許されるための条件について

(1)36協定とは

法定労働時間を超えて労働者に時間外・休日労働させるために,労使間で締結される協定をいいます。

労働基準法では,原則として,労働時間は1日8時間・週40時間以内とされています。

これを「法定労働時間」といいます。

法定労働時間を超えて労働者に時間外・休日労働させる場合には,①労働基準法36条に基づく労使協定(36協定)の締結,②所轄労働基準監督署長への届出が必要となります。

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
(略)

引用:労働基準法|e-Gov 法令検索

(2)残業命令が許されるための条件とは

36協定は,労働基準法の規制を解除する効力をもつにすぎません。

実際に,残業や休日労働を命じるには,上記①と②に加え,契約上の根拠が必要となります。

契約上の根拠については,社員の個別の同意に限られません。

判例上,就業規則に36協定の範囲内で時間外労働をさせることができる旨を定めていれば,その規定が合理的なものである限り,契約上の根拠として認められます。

もっとも,業務上の必要性がない等の事情がある場合には,権利の濫用として無効となる場合がある点に留意する必要があります。

【最高裁平成3年11月28日判決】(日立製作所残業拒否事件)
使用者が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定(いわゆる三六協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該三六協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働する義務を負うものと解するを相当とする 。
第三条
(略)
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

引用:労働契約法|e-Gov 法令検索

2 36協定で定めた残業45時間を超えるとどうなるのか?違反時のリスクと罰則

(1)時間外労働には限度時間がある

36協定には,1日および1日を超える一定の期間についての延長時間の限度(休日労働の場合は労働させることのできる休日)を記載しなければなりません。

2019年4月に改正された労働基準法は,時間外労働の限度時間を月45時間・年360時間と定めています。

そのため,残業が月45時間を超えてしまうと,労働基準法に違反することになります。

ただし,36協定において,取り決めた限度時間を超える時間外労働をさせることを認める「特別条項」があると,違反とならない場合もあります。

改正された労働基準法の適用については,建設業など一部の事業・業務で猶予されていました。

しかし,2024年4月1日からその猶予期間が終了し,一部の例外を除いて労働時間の上限規制が適用されるため注意しましょう。

第三十六条
(略)
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
(略)

引用:労働基準法|e-Gov 法令検索

(2)残業規制に違反した場合のリスクと罰則

① 違反した場合のリスク

残業上限を超え,労働基準法に違反した場合は,社員の健康に影響が出る可能性があります。

社員の健康被害については,会社が責任を負わなければならない場合もあるため注意しなければなりません。

また,労働基準法に違反したという事実が世間に知れ渡れば,会社に対する信用や評価が失われ,採用などにもマイナスの影響が出るでしょう。

一度失われた信用や評価を取り戻すことは,容易ではありません。

② 違反した場合の罰則

残業規制に違反した場合とは,法定労働時間の規制に違反した場合です。

法定労働時間の規制に違反した場合には,労働基準法119条1項によって,行為者に「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。

また,労働基準法121条1項は,違反行為者だけでなく事業主にも罰則を科しています。

そのため,違法な残業を指示していた管理職などだけでなく,会社の代表者なども「30万円以下の罰金」が科される可能性があります。

3 36協定で定めた残業45時間を超える場合の対処法とは?

36協定で残業時間の上限を45時間と定めた場合には,残業45時間を超えると労働基準法に違反し,罰則が科される可能性があります。

そこで,36協定の残業限度時間を超える場合には,以下のような対処を取りましょう。

(1)特別条項付きの36協定を締結する
(2)労働基準監督署に対して誠実に対応する
(3)残業上限を超えないための対策を取る

(1)特別条項付きの36協定を締結する

業務内容によっては,繁忙期などで,どうしても残業時間が45時間を超えてしまうという場合もあるでしょう。

そのような場合には,事前に,限度時間を超える時間外労働をさせることを認める「特別条項」を規定した36協定を締結しておきましょう。

36協定において「特別条項」を定めておけば,月45時間・年360時間という上限を超えて,残業させることが可能となります。

ただし,「特別条項」といっても,1カ月の時間外労働と休日労働の合計時間数の上限を100時間未満としなければならなかったり,1年間における時間外労働の時間数の上限を720時間以内としなければならなかったりなどの制限が存在します。

特別条項を設ける際には,そのような制限に違反しないよう注意しなければなりません。

(2)労働基準監督署に対して誠実に対応する

すでに限度時間を超えてしまった場合という場合もあるでしょう。

基本的に,会社としては,自ら労働基準監督署に対して報告する義務はありません。

しかし,状況によっては,労働基準監督署から調査や指導が入るなどし,事実を報告しなければならないこともあります。

そのような場合,会社としては誠実に対応しましょう。

(3)残業上限を超えないための対策を取る

今後,残業上限を超えないようにするために,どうすれば良いのか検討し,具体的な対策を取りましょう。

具体的に取り得る予防策については,後述します。

4 36協定に違反しないために企業が取り得る予防策とは?

36協定違反した場合には,罰則が科される可能性があります。

違反しないためには,労働時間を削減することが重要な予防策といえるでしょう。

労働時間を削減するための代表的な予防策は,以下になります。

(1)残業時間を可視化する
(2)残業を許可制にする
(3)業務内容を見直す
(4)人員を増やす
(5)残業を良しとする評価制度を見直す

(1)労働時間を可視化する

勤務時間がタイムカードや出勤簿などで管理されている場合,一目で合計の労働時間や残業時間を知ることができません。

いつの間にか残業上限を超えていたなんてことも珍しくないでしょう。

そこで,例えば,勤怠管理システムを導入することが考えられます。

勤怠管理担当者だけでなく社員自身もリアルタイムで勤務時間を確認することができるようになるため,労働時間に対する意識が高まり,結果として労働時間の削減に繋がります。

(2)残業を許可制にする

残業を許可制度のメリットは,「申請が面倒だから時間内に仕事を終わらせよう」と社員が考え,業務時間内の労働生産性を上げることが期待できる点あります。

残業を許可制にすることによって,不必要な残業を減らすことができ,結果として労働時間を削減することできます。

残業を許可制にするには,単に就業規則に定めるだけでなく,社員に周知していなければならない点に注意してください。

また,残業を許可制にしていても,申請のない残業を会社が日常的に黙認していたような場合には,残業時間としてカウントされてしまいます。

正式に残業許可制度を導入した際には,申請や許可のチェックを怠らずに,適切な運用を心掛けましょう。

(3)業務内容を見直す

業務内容を見直すことによって,労働時間を削減することができます。

業務内容の見直しとしては,「本当にその業務が必要なのか」,「必要だとしてももっと効率的にできないか」という視点を持つことが重要です。

また,特定の社員に対する負担が大きい場合には,業務配分の適正化を図ることが重要となります。

(4)人員を増やす

業務内容を見直したとしても,社員一人ひとりの残業時間が減らない場合には,人員を増やすことを検討する必要があります。

現状の人員では,必要な業務を処理しきれていないと考えられるためです。

ただし,業務内容によっては,人材育成に時間を要する場合もあるでしょう。

人員を増やすことが,ただちに労働時間の削減とならない場合もある点に留意する必要があります。

(5)残業を良しとする評価制度を見直す

長時間労働をプラスに評価する風潮があると,会社や上司の評価を気にして,あえて残業するという社員が出てきます。

しかし,現在ではワークライフバランスが重要視され,働きやすい環境のもとで,いかに生産性を向上できるかが重要です。

もし,長時間労働をプラスに評価する風潮があるようでしたら,意識改革を行い,評価制度を見直すことをお勧めします。

評価制度の見直しは,労働時間の削減につながるばかりでなく,優秀な人材の確保にも繋がるでしょう。

5 時間外労働・休日労働でお悩みの方は弁護士にご相談を

今回は,36協定の内容や残業45時間を超える場合の対処法などについて解説しました。

36協定とは,法定労働時間を超えて労働者に時間外・休日労働させるために,労使間で締結される協定のことです。

36協定は,労働基準法の規制を解除する効力をもつにすぎません。

実際に残業や休日労働を命じるには,契約上の根拠が必要な点に注意してください。

また,36協定で時間外労働が認められるにしても,限度時間を超えると労働基準法違反となり,罰則が科される場合もあります。

社員の時間外労働が限度時間を超えないよう,何らかの対策を取るようにしましょう。もし,36協定を含む時間外労働・休日労働などに関してご不明な点がございましたら,当事務所までお気軽にお問い合わせください。

このコラムの監修者

弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

金﨑 正行弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録

交渉や労働審判、労働裁判などの全般的な労働事件に対応をしてきました。 ご相談いただく方にとって丁寧でわかりやすい説明を心がけ、誠心誠意、対応させていただきます。 お困りの方はお気軽にご相談ください。

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