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解雇や給与の支払いなどをめぐって,会社と労働者がトラブルとなることは少なくありません。
トラブルを解決するにあたり,費用や時間をなるべくかけたくない場合には,当事者で話し合って解決するのが良いでしょう。
しかし,言い分が異なる当事者だけで話し合っても折り合いがつかず,なかなか解決にはいたりません。
そこで,労働審判手続を利用することが考えられます。
今回は,労働審判の解決金について詳しく解説します。
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目次
会社と労働者間のトラブルを迅速かつ適切に解決するための手続きです。
当事者による申立てによって,労働審判委員会の関与のもと,話合いによる解決を試みます。
裁判(訴訟手続)とは異なり,非公開で行われます。
特徴としては,専門性,迅速性,柔軟性が挙げられます。
労働審判委員会は,労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名で組織されます。
労働審判員は,雇用関係の実情や労使慣行等に関する詳しい知識と豊富な経験を持つ者の中から任命されるため,専門性を有します。
中立かつ公正な解決が期待できます。
原則3回以内で審理を終えます。
期間としては,3ヶ月以内に審理を終えることが多く,半年以上かかることはほとんどありません。
裁判では1年以上かかることも珍しくないため,裁判と比べ,迅速な解決が期待できます。
労働審判は,まず調停という話合いによる解決を試み,話合いがまとまらない場合には,事案の実情に即した審判が行われます。
裁判とは異なって,当事者の言い分を踏まえた柔軟な解決が期待できるでしょう。
手続きの流れは,以下の通りです。
引用:労働審判手続|裁判所ホームページ
労働審判では,会社が解決金(和解金)を支払って解決することもあります。
例えば,会社による解雇をめぐって労働者が争う場合に,会社が解決金として200万円を支払い,労働者は会社を退職するというケースです。
労働審判で解決金を支払う場合のメリット・デメリットは,以下の通りです。
解決金の支払いを条件とすることで,話合いがまとまりやすくなります。
話合いがまとまると,ただちに審理が終了します。
そのため,解決金を支払う場合には,迅速な解決が望めるでしょう。
解決金を支払うことで,解雇や給与の未払いをめぐるトラブルが解決されます。
長期にわたる訴訟を回避することができるでしょう。
労使間のトラブルが公になると,会社に対する社会的評価に悪影響が生じる可能性があります。
労働審判の手続は非公開で行われます。
解決金の支払うことにより労働審判でトラブルを解決できれば,会社の社会的評価を維持することができるでしょう。
また,和解が成立する場合に口外禁止条項を入れることができれば,会社が不利な内容の和解をしたとしても、外部に漏れる可能性を減らすことができます。
解決金(和解金)は,基本的に即時に支払う必要があります。
まとまった資金がない場合には,資金繰りに影響を与えかねません。
仮に,労働審判において,会社にさして非がないのに,迅速な解決を急ぐあまり安易に高額な解決金を支払うような合意をしてしまうと,同様の事案が存在する場合,それを聞いた他の従業員からも同様の請求がされる可能性があります。
そこで,解決金の支払いと金額の提示は,慎重に行う必要があるでしょう。
労働審判の解決金は,使用者と労働者による話し合いにより,双方が納得すれば決まります。
解決金の相場は,事案によって異なります。
事案によって異なるといっても,基本的には過去の労働審判や裁判で決められた解決金額が参考になるでしょう。
令和4年に厚生労働省が公表した労働審判における解決金の平均値は約285万円,中央値は150万円です。
参考:労働審判事件等における解決金額等に関する調査に係る主な統計表
これまで争いとなった事例において,解決金額は争いの内容によって異なります。例えば,以下のようなケースがあります。
解雇が問題となる事案では,解雇の有効性によって解決金が大きく異なります。
例えば,証拠によって解雇が有効であると認められる場合には,会社が支払う解決金の額はほぼないか,少なくて済むでしょう。
一方で,解雇が無効とされる場合には,解決金の額が多くなります。
この場合,概ねですが,月の給与の3か月~1年ぐらいは支払わなければならない可能性があります。
残業代が問題となる事案では,審判や裁判によって認められる残業代の金額が,解決金の相場に大きな影響を及ぼします。
そのため,証拠上認められる実際の残業時間や既に支払われた残業代などによって,解決金の相場が大きく上下することになります。
パワハラが問題となる事案では,パワハラの内容や回数・期間などが,解決金の相場に影響を与えます。
例えば,罵倒や暴行が伴う場合や回数が多くて期間が長い場合には,解決金が高くなる傾向にあります。
概ねですが,数十万円から100万円程度ですが,被害が甚大な場合にはそれを超えることもあります。
会社としては,できる限り解決金を減らしたいと考えるでしょう。
解決金を減らすために会社ができることをご紹介します。
会社側による行為の正当性を主張することで,解決金を減らすことができる場合があります。
例えば,社員が不当解雇を訴えている事案では,会社が行った解雇が正当であることを主張します。
労働者側にも一定の落ち度が認められる場合もあるでしょう。
労働者に落ち度が認められる場合には,解決金を減らすことができる可能性があります。
例えば,残業について事前許可制にしているのに,許可を得ずに残業をしていた場合などです。
解雇の無効が争われる事案では,労働者が解雇期間中に他で働いて収入を得ていた場合には,その分だけ解決金の減額が認められる可能性があります。
そのため,会社としては,労働者が他で働いて収入を得ていることを主張します。
何が有利な主張で,どのような証拠が必要になるかの判断は,専門的な知識を必要とします。
専門家である弁護士に相談・依頼することで,的確なアドバイスを得ることができるでしょう。
結果として,解決金を減らすことができる可能性があります。
労働審判は,原則3回以内という短期間で審理を終えます。
そのため,交渉を有利に進めるためには事前の準備が重要となるでしょう。
交渉する際の注意点やコツをご紹介します。
会社としては,労働者を説得しようとして不当な圧力をかけるようなケースがあります。
このような行為が発覚すると,会社は反省していないと判断され,労働審判において不利になってしまいます。
また,内容次第では,慰謝料を請求されたり刑事責任を追及されたりする可能性もあるでしょう。
労働者に対して,不当に圧力をかけてはいけません。
解決金を減らす目的で,労働審判委員会に対して虚偽の情報を提供してはいけません。
虚偽の情報を提供したことが発覚すると,不誠実であるとして,不利に扱われる可能性があります。
審判委員や労働者に対して,誠実に対応することを心掛けましょう。
どのような事実が会社にとって有利となるのか,あるいは不利になるのかといった判断は状況によって異なります。
弁護士などの専門家に相談している場合に,専門家の意見を無視することはお勧めしません。
審判委員から具体的な金額を提示されてから検討していては,スムーズに交渉を進めることができません。
あらかじめ譲歩できる解決金を会社内で設定しておきましょう。
労働審判は,労働審判委員会のもとで話し合いが行われます。
会社の主張を説得的に行うためには,証拠が重要となります。
例えば,解雇であれば解雇予告通知や解雇予告手当の支払い,懲戒解雇に該当する事実を明らかにする証拠,労働者からの退職届の存在など,会社側の主張を裏付ける証拠を集めておきましょう。
労働審判は,原則3回以内の審理であり,短期間で判断されます。
会社の言い分は,短期間で全て伝える必要があります。
答弁書には,できる限りすべての主張を盛り込みましょう。
期日で質問される事項はあらかじめ想定することが可能です。
基本的には,答弁書に記載された事実や不明な点が確認されます。
回答にあたって一貫性や合理性を欠く場合には,審判委員の心証を悪くし,自社の主張が認められにくくなる可能性があります。
そのような事態に陥らないために,あらかじめ想定される質問について回答を考えておきましょう。
今回は,労働審判の解決金について解説しました。
労働審判とは,会社と労働者間のトラブルを迅速かつ適切に解決するための手続きです
解決金(和解金)は,使用者と労働者による話し合いにより,双方が納得すれば決まります。
交渉を有利に進めるために,できる限り事前に準備しておきましょう。もし,労働審判を含む労働紛争について,ご不明な点がございましたら,当事務所までお気軽にお問い合わせください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ
金﨑 正行弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
交渉や労働審判、労働裁判などの全般的な労働事件に対応をしてきました。 ご相談いただく方にとって丁寧でわかりやすい説明を心がけ、誠心誠意、対応させていただきます。 お困りの方はお気軽にご相談ください。
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