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突然,従業員からセクハラで訴えられたら,企業はどう対応すればよいのでしょうか。
放置していると,どのような事態となってしまうのでしょうか。
今回は,企業がセクハラで訴えられた場合の対応などについて詳しく解説します。
目次
セクシュアルハラスメントの略であり,職場における性的な言動によって他の者に不利益を与えたり,就業環境を害したりすることをいいます。
令和2年に実施された調査によれば,セクハラに該当すると判断した事案の具体的な内容は,「性的な冗談やからかい」が最も高い割合を占めています。
深く考えず発言してしまった内容がセクハラだったということは珍しくありません。
次いで「不必要な体への接触」,「食事やデートへの執拗な誘い」,「性的な事実関係に関する質問」などが挙げられます。
引用:令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査について|厚生労働省
従業員からセクハラで訴えられた場合,企業に様々な影響が出ます。
例えば,法的な責任として,損害賠償責任を負う可能性があります。
実際にセクハラがあったと判断される場合には,行為者の処分を検討する必要も出てくるでしょう。
報道やSNSを通じてセクハラ問題が公になると,会社の評判が下がってしまうかもしれません。
職場の雰囲気や労働環境にも悪影響を与え,従業員の士気や生産性が低下する可能性もあります。
これらの事態を回避するために,企業はセクハラで訴えられないよう予め対策を講じておく必要があるでしょう。
また,セクハラで訴えられてしまった場合には,さらなる悪影響を招かないために適切な対応を取ることが求められます。
まずは,セクハラを受けた被害者から,会社にその旨の報告があったり,被害者が雇った弁護士から書面が届くということがあります。
次に,会社がそれらに対応しない場合または対応していても交渉がまとまらない場合には,裁判又は労働審判を起こされるということがあります。
その場合には,被害を訴える従業員の請求を認めるのか,あるいは争うのかを裁判所に伝えなければなりません。
放置していると従業員の請求が全面的に認められ,会社が損害賠償責任などの責任を負うことになります。
また,放置するといった不誠実な態度は,会社の社会的評価を大きく低下させることにも繋がるでしょう。
会社としては,被害者からの法的措置に対応することも必要ですが,それ以前にも下記の対応を取る必要があります。
まずは,被害を訴える従業員とセクハラを行ったとされる従業員とが,顔を合わせなくて済むような措置を講じる必要があります。
配置転換やリモートワークなどといった隔離措置を検討し,被害の拡大や職場環境に対する悪影響を最小限に抑えましょう。
事実関係を明らかにするための調査を行いましょう。
具体的には,被害を訴えている従業員とセクハラを行ったとされる従業員から聴き取りを行います。
調査内容は,必ず記録に残しておきましょう。
聴き取った内容に食い違いがある場合には,事情を知っている他の従業員などから聴き取りを行ったりする必要もあるでしょう。
事実調査を行って事実を把握したら,セクハラに該当するか判断することになります。
セクハラに該当するかどうか判断するポイントは,次の通りです。
上記①に該当し,②または③に該当すればセクハラに該当することになります。
組み合わせとしては,①②,②③,①②③の3パターンです。
事実調査を行い,セクハラに該当する判断される場合には,加害者への懲戒処分を検討することになります。
懲戒処分を行うのか,行うとしてどのような処分を課すのか判断しなければなりません。
セクハラ行為の内容や程度,過去の同種案件との比較,加害者の態度などが判断基準となります。
もし,判断を誤って重すぎる処分を課した場合には,懲戒処分が無効であるとして訴訟を提起される可能性もあるため慎重な判断が求められます。
裁判で争う場合,実際どのような主張をすべきか,どのような証拠が必要になるのかなどは,専門的な知識を必要とします。
また,セクハラに該当しないと判断されたとしても,会社が働きやすい職場環境を保つような配慮を欠くと判断される場合には,会社の責任が問われる可能性があります。
セクハラがあったのか,会社が職場環境に配慮していたといえるのか,実際にこれらの調査や判断を会社自身で行うことは難しいかもしれません。
もし,会社が対応を誤れば,事態は悪化しかねません。
そのため,不安がある場合には,専門家である弁護士への相談・依頼を検討しましょう。
参考記事:「職場環境配慮義務」とは何か?企業が知っておくべき法的リスクと対策
セクハラが生じた原因を知ることができれば,今後同じことが起こらないよう対応策を考えることができます。
例えば,従業員に対してハラスメント防止のための研修を行う,従業員が相談しやすい環境を整備することなどが挙げられます。
従業員から再びセクハラで訴えられないよう,再発防止策を講じましょう。
従業員からセクハラで訴えられる事態を防ぐためには,そもそもセクハラが起こらない職場環境作りを行うことが重要です。
また,セクハラ被害が起こってしまったとしても,迅速に適切な対応を取ることによって,訴訟に発展することを防ぐことができるでしょう。
男女雇用機会均等法は,職場のセクハラ対策として,次のような防止措置を取ることを企業に義務付けています。
参考:職場におけるセクシュアルハラスメント対策に取り組みましょう!!|厚生労働省
ここでは,企業にとって特に参考となる裁判例をご紹介します。
原告(女性)は被告会社の代表取締役に体を触られたりしたほか,強姦されそうになったこともあり,その後も性交を求められる等したため,セクハラであると抗議したところ,不利益な取扱いをされ,結果的には解雇されたため,慰謝料を求めた事案です。
裁判所は,以下のような一般論を述べ,会社の損害賠償責任を認めました。
上記裁判例では,セクハラに該当するかの具体的な判断基準が示されています。
会社側は不服であるとして上告しましたが,最高裁はこれを棄却し判決が確定しています。
男性社員が,女性社員である原告の仕事ぶりを快く思っておらず,女性社員の「異性関係が派手である」などと社会的評価が下がるような発言を繰り返したため関係が悪化していました。
そのような中で会社は,当事者間での話し合いによる解決が難しい場合には被害女性である原告を退社させるという方針を定め,原告に一方的な譲歩を迫り,結果的に原告は退職したため,原告が会社に慰謝料を求めたという事案です。
裁判所は,以下のように述べ,原告の請求を認めました。
上記裁判例では,会社が職場環境に配慮すべき義務を負うことが示されています。
セクハラに該当しなくても,会社は事実関係を確認したうえで,適切な対応をとらなければ責任を負う場合があることに注意しなければなりません。
会社の管理職であった原告らが,部下の女性従業員に対して1年余にわたって性的発言を繰り返したこと等を理由に出勤停止の懲戒処分を受けて降格されたことが,会社の懲戒権と人事権の濫用で無効であると訴えた事案です。
第一審である地方裁判所は処分を有効,高等裁判所は無効としていましたが,最高裁は以下のように述べ,会社による懲戒処分を有効としました。
上記裁判例では,会社がセクハラ対策を適切に取り組んでいたにもかかわらず,原告らは極めて不適切なセクハラを行ったなどの事情から,会社の原告らに対する懲戒処分が有効であると判断されています。
会社がセクハラ対策を十分に講じることは,加害者に対する懲戒処分を有効なものとするための事情となり,重要視されていることが分かります。
今回は,従業員にセクハラで訴えられた場合の企業の対応などについて解説しました。
セクハラで訴えられてしまった場合,会社は訴状の内容を確認し,請求内容を認めるのか,あるいは争うのかを裁判所に伝えなければなりません。
また,会社の社会的評価を大きく低下させかねません。
ただちに適切な対応をとり,再発防止策を講じましょう。もし,従業員にセクハラで訴えられてしまった場合には,当事務所までお気軽にお問い合わせください。
このコラムの監修者
弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ
金﨑 正行弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録
交渉や労働審判、労働裁判などの全般的な労働事件に対応をしてきました。 ご相談いただく方にとって丁寧でわかりやすい説明を心がけ、誠心誠意、対応させていただきます。 お困りの方はお気軽にご相談ください。
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