2024.03.27 2024年4月4日

もう悩まない!モンスター社員に円満に辞めてもらう方法と予防策

もう悩まない!モンスター社員に円満に辞めてもらう方法と予防策

入社当初はトラブルとは無縁の優秀な社員だったのに,次第に問題行動ばかり起こすようになった。

注意しても直さない,それどころか開き直って「パワハラだ!」などと攻撃的な態度をとってくるようになった。

そんないわゆる「モンスター社員」と揶揄される問題社員の対応に,頭を悩ませている会社は少なくありません。

一度対応を誤れば,大きな紛争へと発展しかねません。

会社がモンスター社員に円満に辞めてもらうには,どのように対応すべきなのでしょうか。今回は,その様な問題社員を抱え続けるリスクと対処法,さらに,「モンスター社員」を生まない環境作りについて解説します。

1 「モンスター社員」とは?企業に潜むリスクと損害

(1)「モンスター社員」とは?その特徴

「モンスター社員」とは,会社に対して理不尽な要求をしたり,常識外れの態度で周囲を振り回して迷惑をかけ,会社や上司などが対応に苦慮する社員をいいます。

例えば,次のような特徴を持つ社員です。

・正当な理由もなく業務命令に従わない
・求められる能力が不足している
・同僚や上司に対して暴言を吐く,暴力を振るう
・部下や弱い立場の他人に対していじめやハラスメメントする
・SNSや取引先などに会社の悪口を言いふらす
・社内で社員の悪口や噂話を言いふらす
・自分の仕事を他人に押し付ける
・自分の失敗・責任を他人に転嫁する
・無断欠勤や遅刻,早退を繰り返す
・仕事中にスマホでゲームしたりネットサーフィンしたりする
・問題行動を注意しても同様の行動を繰り返す

上記項目に複数当てはまる場合は,「モンスター社員」に該当する可能性が高いでしょう。

(2)会社が抱えるリスクや損害

モンスター社員と呼ばれる人が会社にいると,秩序が乱れて他の社員に悪影響を与えることになります。

放置してしまうと,優秀な人材が退職してしまう可能性があります。

また,モンスター社員であっても人件費はかかる一方,生産性がありません。

それどころか,取引先で問題を起こして取引を断られてしまい,損失を被ってしまうリスクがあります。

そのため,会社には何らかの対応が求められます。

しかし,会社の対応次第では,会社が損害を被るケースもあります。

例えば,安易に解雇してしまうと,不当解雇として解雇が認められないばかりか,解雇以後の賃金を支払わないといけなかったり,慰謝料を支払わなければならなかったりする可能性が生じます。

そのような紛争に発展してしまうと,時間や労力を割くことにもなってしまいます。

会社には,事案に応じた適切な対応をとることが求められます。

2 なぜ社員が「モンスター化」してしまうのか,原因と対応を考える

入社当初は何の問題もなかった社員が,ある日突然「モンスター化」してしまうのはなぜでしょうか。

原因を知ることができれば,対応を考えることが可能となるでしょう。

モンスター社員になってしまう背景には,次のような要素が挙げられます。

(1)不適切な人員配置
(2)偏った評価制度
(3)望ましくない職場環境
(4)不足するメンタルヘルスケア

(1)不適切な人員配置

能力やスキルが発揮できない部署に社員を配置することは,社員が不満を持つ要因となります。

仕事に対するモチベーションは下がり,ストレスを抱える要因になってしまいます。

このような状況に陥ると,社員がモンスター化してしまう可能性があります。

個々の能力やスキルを活かすことができるよう,適切に人員を配置することが求められます。

(2)偏った評価制度

例えば,勤務実態を軽視して営業成績などの成果ばかりを評価することは,モンスター社員を生み出す原因になります。

成績が良いから誰も口を出することができない,そんな環境をつくり出してしまいます。

逆に,成果を正当に評価しないことは,モチベーションの低下やストレス増加につながってしまいます。

バランスのとれた適正な評価制度を構築することが望ましいでしょう。

(3)望ましくない職場環境

日頃からコミュニケーションをとる機会が少ない,特定の人物が優遇されているなどといった望ましくない職場環境は,社員が不満やストレスを抱える要因となります。

優遇されている人物に関しては,横暴な態度をとる要因となりかねません。

モンスター社員を生み出さない職場環境づくりが必要になります。

職場環境づくりについては,後述する「5 モンスター社員を生まない職場環境づくり」で詳しく解説します。

(4)不足するメンタルヘルスケア

社員のストレスや不安からモンスター社員が生まれてしまう可能性があります。

厚生労働省が実施した令和4年の調査(令和5年に公表)によれば,メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.4%でした。

約3割以上の事業所がメンタルヘルス対策に取り組んでいないことになります。

社員のストレスチェックや必要な配慮の実施など,メンタルヘルスケアを実施することが求められます。

引用:令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)|厚生労働省

3 モンスター社員をできるだけ円満に退職へ導く方法

モンスター社員が生まれる原因が明らかになり,会社が対応したとしても,どうしてもモンスター社員が生まれてしまう場合があります。

会社としては,できるだけ穏便に解決することを望むでしょう。

できるだけモンスター社員との紛争を避け,円満に退職へ導くための方法は次の通りです。

(1)問題行動に関する証拠を収集する
(2)注意や指導を繰り返す
(3)懲戒処分を行う
(4)退職勧奨する
(5)解雇する

(1)問題行動に関する証拠を収集する

モンスター社員は,攻撃的である場合が少なくありません。

「証拠はあるのか?」「証拠もないのに注意してくるなんてパワハラだ!」などと主張してくるかもしれません。

また,後々紛争となった場合には,証拠が非常に重要となってきます。

紛争を未然に防ぐ,あるいは後々の紛争に備えるために,必ず問題行動に関する証拠を収集しておきましょう。

(2)注意や指導を繰り返す

問題行動があるたびに,注意や指導を繰り返します。

注意や指導を行うたびに,記録するなど証拠を残すようにしてください。

徹底的に注意や指導を行ったという事実は,後々解雇をするのもやむを得ないという事情となり得ます。

(3)懲戒処分を行う

注意や指導を繰り返しても改善されない場合には,懲戒処分を行います。

懲戒処分が認められるには,就業規則に懲戒事由と種別が定められている必要があります。

問題行動の内容が余程でない限り,基本的には,懲戒種別の中でも軽い処分から行います。

戒告・けん責から始まるのが一般的で,戒告(将来を戒める処分)やけん責(始末書の提出を求める処分)によって反省し,改善されるかもしれません。

それでも改善しなければ,減給や停職などの懲戒処分を行います。

(4)退職勧奨する

退職勧奨とは,社員に自発的な退職意思の形成を促すために,会社が社員に辞職を勧める,あるいは合意解約による退職を勧める行為です。

退職の判断を社員に委ねるという点で,事実上退職を強制する論旨解雇とは異なります。

モンスター社員は,「まさか自分が退職を促されるとは思っていなかった」という場合もあるため,行動を反省させる最後のきっかけになるかもしれません。

ただし,退職勧奨のタイミングを誤まれば,相手が開き直って会社に損害を与えるような行動にでる可能性もありますので,タイミングが重要となります。

もし,提示した条件で相手が納得しない場合には,譲歩できる範囲で譲歩することも重要です。

(5)解雇する

これまで様々な対応をとってきたにもかかわらず改善されない場合には,最終手段として解雇するしかありません。

しかし,解雇は社員の生活に大きな影響を与える重大な処分ですので,容易に認められるわけではない点に注意しましょう。

解雇権の濫用であると判断された場合には,解雇が無効となってしまいます。

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:労働契約法|e-Gov 法令検索

関連記事:懲戒解雇は最終手段!会社側が抱える3つのデメリットとは?

4 モンスター社員に絶対にやってはいけないこと

モンスター社員に辞めてもらいたいと,会社は様々な対応を検討するかと思います。

その中には,社員の権利を不当に侵害してしまうものもあるかもしれません。

次に挙げるような対応はしないよう気をつけましょう。

(1)即時解雇する
(2)対話を避ける
(3)他の社員に解決させる
(4)感情的に反応する

(1)即時解雇する

モンスター社員に「今すぐにでも辞めてもらいたい」と考えていらっしゃるかもしれません。

しかし,適切な段階を踏んでいないと,解雇が無効とされる可能性があります。

まずは,事実確認などの調査を行い,注意や指導にとどめましょう。

余程のことがない限り,モンスター社員を即時解雇することは避けるべきです。

(2)対話を避ける

モンスター社員との対話を避けることは,問題を悪化させてしまう可能性があります。

問題行動を起こす理由によっては,会社側で改善すべき点が見つかるかもしれません。

注意や指導を行うにあたっても,会社による一方的な注意や指導は避け,社員の言い分も聞くなどして問題を解決する努力が必要です。

(3)他の社員に解決させる

会社が対応するのは面倒だからと,他の社員にモンスター社員の対応をさせてはいけません。

他の社員に解決を任せることは,社内の雰囲気をかえって悪化させる可能性もあります。

他の社員の協力を求めることは良いですが,投げっぱなしにしないよう気をつけましょう。

(4)感情的に反応する

モンスター社員に対して感情的な対応をとってはいけません。

相手を刺激してしまい,かえって問題がエスカレートしてしまう可能性があります。

また,感情的になって思わぬ失言をしてしまい,取り返しのつかない事態に陥ってしまうかもしれません。

面と向かって対応する場合には,必ず一度冷静になることが重要です。

5 モンスター社員を生まない職場環境づくり

モンスター社員を生まないためには,そもそも採用を慎重に行うことが重要です。

しかし,採用段階で必ずしもその人物の全てが分かるわけではありません。

そのため,次の段階として,モンスター社員を生まない職場環境づくりが重要となってきます。

例えば,次のような環境づくりが挙げられます。

(1)評価制度や賃金体系を見直す
(2)普段のコミュニケーションを大切にする
(3)特定の人物を特別扱いしない

(1)評価制度や賃金制度を見直す

例えば,営業成績のみで評価されたり,特別な権限が与えられたりする環境は,モンスター社員が生まれやすい環境となります。

普段の勤務実態も評価対象に取り入れることによって,モンスター社員が生まれにくくなります。

残業や休日出勤できる者しか昇進・昇格できない慣習がある場合も,モンスター社員が生まれやすい環境となってしまいますので注意しましょう。

(2)普段のコミュニケーションを大切にする

職場で普段からコミュニケーションが図られていると,モンスター社員が生まれにくい環境になります。

もし,問題行動があったとしても,早期に発見することができるでしょう。

早期に適切な注意や指導を行うことで,問題がエスカレートせずに済みます。

(3)特定の人物を特別扱いしない

業務成績が優秀である,あるいは皆から慕われているからといって,社内の特定の人物を優遇したり権限を与えたりしてしまうとモンスター社員が生まれる可能性が生じます。

特別な待遇や権限を手に入れると,会社に理不尽な要求を主張しやすくなります。

特定の人物を特別扱いすることは避けましょう。

同じ仕事を何年も担当させ,その人しか把握していない業務が存在する状況を作りだすことも可能な限り避けるべきでしょう。

6 まとめ

今回は,モンスター社員に円満に辞めもらう方法などについて解説しました。

モンスター社員とは,会社に対して理不尽な要求をしたり,常識外れの態度で周囲を振り回して迷惑をかけ,会社や上司などが対応に苦慮する社員をいいます。

モンスター社員がいると,会社の秩序が乱れて他の社員に悪影響を与えることになりますので,放置しておくことはお勧めしません。

だからといって,安易に即時解雇することは避けましょう。

モンスター社員に円満に辞めてもらうには,法律に則り段階的に行動をとる必要があります。もし,モンスター社員の対応でお悩みである場合には,当事務所までお気軽にお問い合わせください。

このコラムの監修者

弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

金﨑 正行弁護士(大阪弁護士会) 弁護士ドットコム登録

交渉や労働審判、労働裁判などの全般的な労働事件に対応をしてきました。 ご相談いただく方にとって丁寧でわかりやすい説明を心がけ、誠心誠意、対応させていただきます。 お困りの方はお気軽にご相談ください。

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